米Siemens Digital Industries Software(シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア、以下Siemens DIS)は、大規模なICの電源系解析に向けたEDA(Electronic Design Automation)ソフトウエア「mPower」を2021年9月28日(現地時間)に発表した ニュースリリース 。mPowerは一般にPI(Power Integrity)解析ツールと呼ばれるソフトウエアであり、電源系のIRドロップ(電圧降下)やエレクトロマイグレーション(EM)などを解析し、電源系の安定性を検証する。

 市場には複数のPI解析ツールがあるが、Siemens DISによれば、競合製品に比べて大規模な回路を扱えることが、新製品の最大の特徴だという。特に大規模なアナログICを解析する製品は市場に見当たらず、新製品の差異化ポイントだとする。センサーアレイやメモリーなど、100億トランジスタ規模のICの解析も可能という。

市場にある既存製品では大規模なアナログ回路を扱えなかった
市場にある既存製品では大規模なアナログ回路を扱えなかった
(出所:Siemens Digital Industries Software)
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新製品のmPowerは100億トランジスタのアナログ回路を扱える
新製品のmPowerは100億トランジスタのアナログ回路を扱える
(出所:Siemens Digital Industries Software)
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 mPowerにはアナログ回路向けの「mPower Analog」とデジタル回路向けの「mPower Digital」がある。どちらも基盤部分は同じだが、それぞれ向けの機能を備える。アナログ-デジタル混在IC(いわゆるミックストシグナルIC)の解析には両方を使う。mPower AnalogはIRドロップやEMといったPI解析ツールの基本的な解析機能を備える。mPower Analogは、外付けしたSPICE回路シミュレーター(同社の「Analog FastSPICE」など)を使って電源系の電流波形を求め、その電流波形からIRドロップやEMを解析する。

 mPower Digitalは論理シミュレーターと組み合わせる解析(ベクタード解析)と、パラメーターベースの解析(ベクターレス解析)の双方が可能である。ベクタード解析では、RTL(Register Transfer Level)シミュレーションまたはゲート・レベル・シミュレーションが選べる。前者は解析時間が短い。後者は解析精度が高い。ベクターレス解析はベクタード解析より解析時間が短い。パラメーターの精度がよければ解析精度が上がる。このほか、mPower Digitalはパワーゲートを使った回路のピーク電流値を求める機能などを備える。

 mPower AnalogとmPower DigitalはGUI(Graphical User Interface)を備えており、解析の設定や解析結果の確認などをグラフィカル環境で実行できる。また、双方とも、階層的な解析(下位階層の解析結果を上位階層で利用することで、精度を維持しながら全体の処理時間を短縮する)や、複数のコンピューティングリソースを使う分散・並列処理が可能である。

分散・並列処理が可能
分散・並列処理が可能
(出所:Siemens Digital Industries Software)
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 mPower AnalogとmPower Digitalは現在、販売中である。Siemens DISが日本の報道機関向けに21年10月14日に行ったオンライン会見では米ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)や米MaxLinear(マックスリニア)ら4社をmPowerのユーザーとして紹介していた。

米ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)での適用事例
米ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)での適用事例
(出所:Siemens Digital Industries Software)
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米MaxLinear(マックスリニア)での適用事例
米MaxLinear(マックスリニア)での適用事例
(出所:Siemens Digital Industries Software)
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米Efinix(エフィニックス)での適用事例
米Efinix(エフィニックス)での適用事例
(出所:Siemens Digital Industries Software)
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米Esperanto Technologies(エスペラント テクノロジーズ)の適用事例
米Esperanto Technologies(エスペラント テクノロジーズ)の適用事例
(出所:Siemens Digital Industries Software)
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