NTNは、自動車のトランスミッションやディファレンシャルなどの動力伝達装置向けに開発した軸受「自動車用ULTAGE(アルテージ)円すいころ軸受」(以下、自動車用ULTAGE)の量産と納入を開始した(図1、2)。同軸受は、転動体(ころ)の形状を工夫して負荷容量(基本動定格荷重)を高めたのが特徴。従来比で負荷容量は1.2倍に、軸受定格寿命は1.8倍以上に、許容回転速度は約10%、それぞれ向上している。

図1:「自動車用ULTAGE(アルテージ)円すいころ軸受」
(出所:NTN)
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図2:使用例
(出所:NTN)
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 自動車用ULTAGEには、プラント設備や産業機械向けの「ULTAGE大形円すいころ軸受」で採用した「特殊クラウニング」を改良し、適用した(図3)。一般に円すいころ軸受では、転動体と内輪・外輪の接触を滑らかにするために、転動体の外径面に曲面加工(クラウニング)を施す。通常、この曲面の曲率半径は一定だが、自動車用ULTAGEに採用した特殊クラウニングは、少しずつ半径が変わる特殊な曲面を描く。同社は、20年以上の研究で何千ものパターンを検討し、形状を最適化したという。

図3:軸受の構造
(出所:NTN)
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* 2014年4月30日付、NTNのニュースリリース

 特殊クラウニングは加工に手間がかかるため、同社はまず、比較的サイズが大きく製造個数が少ないULTAGE大形円すいころ軸受に採用。その上で、設計や製造プロセスを見直し、サイズが小さく製造個数の多い自動車用円すいころ軸受にも特殊クラウニングを適用した。

 高負荷や偏荷重がかかっても転動体と軌道輪(内外輪)の接触面圧を均一にできるため、軸受が潜在的に持つ寿命を最大限に引き出せるという。加えて、転動体と内輪・保持器とのすべり接触部の形状の工夫により、回転トルクの増大とつば面の温度上昇も抑制。許容回転速度を向上させている(図4)。

図4:標準品との昇温性の比較
(出所:NTN)
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 同社によると、装置の高出力化に伴って軸受には高速回転性能が求められているという。加えて、軽量化の手段として使われるアルミニウム合金製のハウジングは、鋼製のそれに比べて剛性が低く、軸受に加わる偏荷重が増加する。自動車用ULTAGEは負荷容量が高く、このような過酷な環境下でも軸受寿命を確保できるとしている。

 通常タイプの他、特殊熱処理によって耐焼き付き性を向上させ、軸受定格寿命を従来比で3.8倍以上に延ばした高機能タイプも開発している。同社は、特定のサイズから量産を開始して順次、他のサイズも展開していく計画だ。