米マイクロチップ(Microchip Technology)は、航空宇宙用途向けに放射線耐性の高いFPGAの新製品「RT(Radiation-Tolerant) PolarFire」を発表した(日本語ニュースリリース:PDF)。新製品は100kRadsを超えるTID(Total Ionizing Dose)耐性を備えるという。

今回の新製品(中央)と想定する応用例。Microchipのイメージ
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 今回発表されたRT PolarFireは、2017年に発表した低消費電力ミッドレンジFPGA「PolarFire 」(関連記事1)に、2015年に発表した放射線耐性の高いFPGA「RTG4」(関連記事2)の対放射線技術を盛り込んだ製品である。RTG4は放射線によるSEU(Single Event Upset)やSEL(Single Event Latch-ups)、コンフィグレーションデータ破壊が発生しにくく、広く宇宙アプリケーションに使われているという。

 新製品のRT PolarFireはRTG4と同等の放射線耐性を備えながら、最大5倍の演算能力を持つとする。「ニューラルネットワークを利用した物体検出や認識、高解像度の画像処理、高精度の遠隔計測など、宇宙アプリケーションでは高い演算能力が必要になるケースが増えている。今回の新製品はそうしたニーズに応えることができる」(同社)。

 既存のRTG4に比べて新製品は、性能が50%高く、LE(Logic Element)数は3倍(最大50万LE)と多く、広いSERDES帯域(10Gビット/秒のトランシーバーを集積)を提供できるという。また従来比で6倍の容量のSRAM(最大33Mビット)を集積する。新製品はプログラム素子としてSONOS(Silicon Oxide Nitride Oxide Silicon)構造の不揮発性メモリーを使っているため、プログラム素子に揮発性のSRAMを使うFPGAに比べて消費電力が50%少ないほか、放射性耐性が高くコンフィグレーションデータの破壊が起きにくいとする。

「RT PolarFire」の機能ブロック図。Microchipの図
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 RT PolarFire(RTPF500T)は、デカップリングコンデンサーと一緒にセラミック製CGA(Column Grid Array)パッケージに気密封止されて2021年に出荷開始予定である。なお、出荷の際には、航空宇宙用途部品として、QML(Qualified Manufacturers List) Class V認証を取得するという。

 Microchipによれば、RT PolarFireのユーザーは、一般向け(商用)のPolarFire(MPF500Tなど)を利用してすぐに設計を開始できる。その際に、同社のFPGA開発ツール「Libero」のオプションを使うと、SEU対策に向けたTMR(Triple Mode Redundancy)構造を制御回路などに容易に取り込めるという。現在、商用のPolarFireベースの開発ボードを提供中。後日、RT PolarFireベースの開発ボードを提供予定である。

商用のPolarFireベースの開発ボード。Microchipの写真
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