村田製作所は、外形寸法が10.5mm×9.0mm×2.1mmと小さい48端子LGAパッケージに封止した降圧型DC-DCコンバーターモジュール「UltraBK MYTNシリーズ」を4製品発売した(ニュースリリース)。最大の特徴は、コンデンサーや抵抗などの外付け部品を含めたDC-DCコンバーター回路全体のプリント基板上の実装面積が143mm2と小さいことだ。同社によると、「市場で入手できる一般的な製品と比較すると、プリント基板上の実装面積を約50%削減できる。実装面積は業界最小」という。変換効率は高い。4A品は最大90.0%、6A品は最大90.5%が得られる。PCI Expressカードや、AIアクセラレーターカード、ハイ・パフォーマンス・コンピューター(HPC)、5G通信(第5世代移動通信システム)の基地局などに向ける。

 実装面積の削減と高い変換効率を同時に実現できた理由は、DC-DCコンバーターの変換アーキテクチャーにある。今回、チャージポンプ回路と降圧型DC-DCコンバーター回路を組み合わせる「2ステージアーキテクチャー」を採った。チャージポンプ回路の降圧比は3である。まず、これを使って、+12V程度の入力電圧を+4V程度の電圧に降圧する。続いて、降圧型DC-DCコンバーター回路で、+4V程度の電圧を+1V近辺の電圧に変換して出力する。同社によると、「降圧型DC-DCコンバーター回路の入出力電圧差が小さいので、従来に比べて体積が約1/10と小型のインダクターを使える。このため実装面積の大幅な削減が可能になった」という。さらに、「チャージポンプ回路や降圧型DC-DCコンバーター回路を構成するスイッチング素子(FET)に低耐圧品が使えるようになるため、変換効率を高められた」(同社)。

 なお、従来は、1ステージのアーキテクチャーだった。すなわち、1つの降圧型DC-DCコンバーター(スイッチングレギュレーター)回路を使って、+12V程度と高い入力電圧を+1V近辺の低い出力電圧に一気に変換していた。つまり入出力電圧差が大きい。このため変換効率を高めようとすると大きなインダクターが必要になり、実装面積が大きくなっていた。一方で、実装面積を小さくするために小さなインダクターを採用すると、変換効率が低下してしまっていた。

外形寸法が10.5mm×9.0mm×2.1mmと小さい48端子LGAパッケージに封止した降圧型DC-DCコンバーターモジュール
村田製作所の写真
[画像のクリックで拡大表示]
新製品(左)と従来品(右)の変換アーキテクチャー
村田製作所の資料
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の新製品は、村田製作所が培ってきた電源回路技術に、同社が2014年に買収したRF半導体メーカーである米pSemi(買収当時は、米Peregrine Semiconductor)が保有する製造プロセス技術と電力変換技術を組み合わせることで実現した。なお、pSemiは17年に米Arctic Sand Technologiesを買収している。Arctic Sand Technologiesは、チャージポンプ回路などに関する特許を取得しており、今回はこの技術を活用したようだ。新製品はチャージポンプ回路と降圧型DC-DCコンバーター回路のどちらも2つずつ用意しており、それを時分割で駆動する2フェーズ(2相)構成を採用した。PGOOD信号出力機能や、過電流保護機能、過熱保護機能、リモートオン/オフ機能、出力電圧監視機能などを備える。

 発売した4製品はいずれも入力電圧が+6.0~14.4V。出力電圧は+0.7~1.8V。スイッチング周波数は1MHzである。4製品の違いは、最大出力電流とI2Cインターフェースの有無にある。最大出力電流の選択肢は4A品と6A品であり、それぞれにI2Cインターフェースの搭載品と非搭載品を用意した。例えば、最大出力電流が6Aで、I2Cインターフェースを搭載していない「MYTNA1R86RELA2RA」の主な仕様は下表の通りである。4製品いずれも、価格は明らかにしていない。

最大出力電流が6Aで、I2Cインターフェースを搭載していない「MYTNA1R86RELA2RA」の主な仕様
村田製作所の資料
[画像のクリックで拡大表示]

 今後、村田製作所は、2ステージアーキテクチャーを採用した降圧型DC-DCコンバーターモジュールの品ぞろえを拡充する予定。今回の新製品では、チャージポンプ回路の降圧比が3で固定しているが、2021年には入力電圧に応じて降圧比を2と3の間で自動的に切り替えられる製品を市場投入する計画である。