TDKは、車載カメラで撮影した映像信号を伝送するPoC(Power over Coaxial)ラインのノイズ対策に向けたフェライトビーズ「MDF1005GAD102ATD25」を開発し、2020年12月に量産を開始する(ニュースリリース)。同社は「ノイズ・サプレッション・フィルター」と呼ぶ。PoCは、電源と映像(LVDS)信号を1本の同軸ケーブルで送るデータ伝送技術である。発売したフェライトビーズは、同軸ケーブルとDC-DCコンバーター回路の間に挿入して使用する。「ノイズが存在すると、これがDC-DCコンバーター回路に混入して動作に悪影響を与える。新製品は、ノイズがDC-DCコンバーター回路に入らないようにブロックする役割を担う」(同社)。積層タイプのフェライトビーズであり、外形寸法は1.0mm×0.5mm×0.5mm(1005サイズ)と小さい。車載用受動部品の品質規格「AEC-Q200」に準拠する。具体的な応用機器は、車載カメラのほか、ADAS機器やテレマティックスユニットなどである。

車載カメラのノイズ対策に向けたフェライトビーズ
TDKのイメージ
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 同社によると、「今後、車載カメラは搭載数が増えると同時に、高解像度化と高速伝送化が進む。このためPoCラインで送る電力(電流)は増大し、映像信号はより高周波になる」という。新製品は、こうしたトレンドに対応すべく特性を見直した。具体的には既存製品比で、以下のように3つの特性を改善した。1つ目は、700M〜2.4GHzと高い周波数領域のインピーダンスを高めたことである。例えば、900MHzにおけるインピーダンスは1000Ω(標準値)と高い値を確保した。

新製品のインピーダンス周波数特性
TDKの資料
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 2つ目は、直流(DC)重畳特性を改善したことである。一般に、フェライトビーズなどの磁性部品では、直流電流を流すとインピーダンス(インダクタンス)が変動する(低下する)現象が発生する。新製品では、「この変動を大幅に抑えた。変動分はほんのわずかである」(同社)という。

新製品の直流重畳特性
TDKの資料
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 一般に、PoCラインに挿入するノイズフィルター回路は、周波数領域が異なる3つもしくは4つの部品(コイル)を組み合わせて構成するが、「今回の新製品を高い周波数領域(下図のCoil3)向けに使えば、自動車関連メーカーがPoCラインに求める挿入損失の規定値を広い周波数帯域にわたって順守できる」(同社)という。

新製品を使ったPoC向けノイズフィルター回路
TDKの資料
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 3つ目は、定格電流を400mA(+125℃における値)に高めたことである。同社従来品は200mAだった。直流抵抗は0.53Ω(標準値)である。こうした3つの特性の改善は、フェライト材料を新規に開発することで実現した。詳細は明らかにしていないが、「高周波化はフェライト材料の組成比の変更で対応。直流重畳特性の改善はフェライト材料に混ぜる添加剤を新規に開発することで達成した」(同社)という。

 量産は2020年12月に始める。サンプル価格は30円。今後同社は、品ぞろえを拡充する予定である。まずは、対応する周波数領域や定格電流はそのままで、インピーダンス値が異なる製品を投入する。その後、最大周波数を4GHzに高めたり、定格電流を500m〜700mAに増やしたりした製品を用意する考えである。