スマートスケープ(本社東京)は、拡張現実(AR)に対応した製品マニュアルを簡単に作成できるツール「REFLEKT ONE」(リフレクトワン)の提供を開始した。タブレットなどにマニュアルをダウンロードしておき、現実空間の対象製品にかざすと、画面上の3Dモデル(以下、ARモデル)が出現して作業内容や動作を表示する(図1)。機器のメンテナンス用マニュアルや、建築物の施工確認などでの利用を想定する。開発はドイツ・リフレクト(RE'FLEKT)。

図1:「REFLEKT ONE」で作成したマニュアルのイメージ
実物を認識すると画面上のARモデルが実物と重なり、ARコンテンツが表示される。(出所:スマートスケープ)
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 同ツールで作れるのは[1]2Dドキュメントのマニュアル、[2]3Dパーツ説明マニュアル、[3]3Dアニメーションマニュアルの3種類。[1]はARモデルを使わず、文字をベースに画像などを追加して作る一般的なマニュアルだ。それに対して[2][3]では、ARモデルに作業手順や説明文を組み合わせる。ARモデルはインポートした3D-CADデータから作成される上、XML形式で説明文を編集できるので、プログラミングのスキルがなくても容易にARマニュアルを作れるという(図2)。

図2:マニュアルの作成画面例
XML形式でドキュメントを入力していく。(出所:スマートスケープ)
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 [2]では、ARモデルと実物を重ね合わせて詳細を知りたい部品をタップすると、2Dドキュメントマニュアルを見られる(図3)。さらに[3]は、ARモデルに説明文とアニメーションを加えており、作業内容をステップ順に表示できる(図4)。アニメーションは、部品の移動や強調、回転などの基本動作を表現するだけでなく、部品を分解して表示する、ねじを回転させながら外す、オイルを塗布するといった動きも付加できる。このため、設備・機器のメンテナンスや操作マニュアルに向く。遠隔作業支援ツール「REFLEKT Remote」との連携も可能。遠隔地と現場の最大4カ所で画面を共有し、現場は画面表示や音声で遠隔地から指示を受けられる。

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図3:3Dパーツ説明マニュアルの例
詳細を知りたい部品をタップすると、その部品のみを表示できる。(出所:スマートスケープ)
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図4:3Dアニメーションマニュアルの例
1つの手順を終えて「Next」をタップすると、次の手順へ進む。(出所:スマートスケープ)

 作成したマニュアルは、専用のビューワーをインストールしたタブレットやスマートフォン、スマートグラス「Microsoft Hololens」での閲覧が可能。作成・編集したマニュアルをクラウドサーバーに保存し、そこから端末にダウンロードするため、オフライン環境でも使える。

 ARコンテンツを表示するトリガーとしては、一般的なARマーカーや平面画像に加えて、現場にある実物を利用できる。主に骨格を認識してARコンテンツが立ち上がるが、トラッキングの精度(画面上のARモデルと実物の形状がどの程度一致すればARを起動させるか)は、コンテンツの編集時にあらかじめ設定しておける。ロボットの台数が多い工場など、似た物が多い環境ではトラッキング精度を高める。

 ARマニュアルは、機器メンテナンスや設備の点検・保守作業の手順書として利用する他、大型の製造物の検査にも使える。例えば建築や造船などの現場で、実物とARモデルを重ね合わせて表示させれば、正確な位置に施工されているかをチェックでき、検査にかかる時間を縮められる。スマートスケープによると、ポリゴン数で約60万までのデータに対応し、自動車ほどの大きさなら認識できることを確認している。単純な形状ならより大きな物にも適用でき、橋梁などへの応用も検討している段階だという。ニーズは「機器メンテナンス:設備の点検・保守:大型製造物の検査で4:2:4程度」(同社)とみている。

 同社によると、海外ではARを活用したマニュアルの導入事例が多く、ドイツBMWや同Audi、同ボッシュ(Bosch)、同シーメンス(Siemens)、スウェーデン・ボルボ(Volvo)、スイスABBなどがリフレクトワンを採用している。例えば真空ポンプの大手メーカーは、メンテナンス手順をARマニュアル化することで、経験の浅い技術者によるメンテナンスを可能にした。大手医療機器メーカーは、医療機関のスタッフや医師のトレーニングにARマニュアルを利用している。大手自動車メーカーは、ARの重ね合わせによってエンジンの修理手順と確認手順を明確にし、失敗リスクを減らしたという。

 リフレクトワンは、マニュアルを作成するパソコン用のライセンス「REFLEKT ONE Authoring Suite」と管理機能ライセンス「同Cloud/Server」、閲覧用のライセンス「同Viewer」の3種類のライセンスで構成される。価格は、同Viewerが5ライセンスの場合で約400万円から。PoC(Proof of Concept)用の導入も可能で、2カ月で約60万円から。同様の機能を持つ米PTCの「Vuforia」(関連記事)に比べて「安価に設定している」(スマートスケープ)という。スマートスケープは同ツールを、クラウドサービスの他オンプレミスでも提供する。