近頃、「日本はAI後進国である」といった指摘も散見されるなか、国内大手企業ではIT企業/ユーザー企業を問わずAI関連人材の育成を急ぐ動きがみられる。だが、AI活用で十分な成果を得るには、IT企業に丸投げするのではなくユーザー企業が主体的に取り組むべきポイントもある。特に抜け落ちやすいのが、これから述べる3つの業務視点だ

どんなに優れたモデルでもデータがなければ役に立たない

 AI活用の手法や技術は多岐に渡る。中でも取り上げられる機会が多いのが「ニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)」だろう。人間の脳を模して作られた「ニューラルネットワーク」に、正しい入力/出力データ(「教師データ」と呼ぶ)を与えて繰り返し学習させることで、新たな入力データに対しても適切な出力データを導き出せる「モデル」を育てる。

 既に、さまざまな工夫が凝らされたモデルがある。データの特徴を抽出するフィルタを備え、画像認識などに使われることの多い「CNN(Convolutional Neural Network)」や、音声や文章といった時間的な流れのあるデータを扱いやすい構造を持つ「RNN(Recurrent Neural Network)」、それをさらに発展させた「LSTM(Long Short-Term Memory)」などが、その代表例だ。

 ディープラーニングの実践には、学習用のデータが不可欠だ。例えば、ディープラーニングで製造装置の故障を予測したい場合は、製造装置の稼働状況を示すデータを事前に収集し、モデルに学習させる必要がある。

手間や費用に見合ったデータ収集、3つの視点

 学習用データの取得にはさまざまな方法がある。例えば製造装置の稼働状況であれば、「装置内の温度を測定する」(温度の分析)、「装置の駆動音を収集する」(音声の分析)、「モニターの波形を調べる」(画像の分析)などが考えられる。つまり、「どうやってデータを取得するか?」を検討する必要があるわけだ。

 この例では故障予知が目的なので、データ取得に多額の費用をかけることは現実的でない。しかし、「製造装置の故障予知」のほかにも、顧客分析や防犯対策など多種多様な目的が考えられる。それが売上向上に直結するものなのであれば判断も変わってくるだろう。従って、「何のためにデータを取得するのか」「どのような業務場面に適用するのか」を明確にすることが大切だ。

 以上をまとめると、AI活用に不可欠なデータ収集を行う際には、下記の3点をユーザー企業自身が明確にしておくことが大切だ。

【視点1】どのような業務場面に適用するか?
例:故障予知、顧客分析、防犯対策など

【視点2】何のためにデータを取得するのか?
例:業務効率化、コスト削減、ニーズ把握など

【視点3】どうやってデータを取得するのか?
例:監視カメラ、ウェアラブル、ドローンなど

 特に視点1と視点2はAI活用の目的(何のためのAI活用なのか)に直結するものであり、ユーザー企業自身が検討すべきだ。視点3についても、「温度を測るべきか?駆動音を収集するべきか?」といった判断は、日々業務に携わっているユーザー企業でなければ難しい。

 IT企業側は日々進歩するAI関連の技術や手法に追随するため、ユーザー企業のデータ取得を支援するところまで手が回らないこともある。実際、IT企業によるAI活用提案を見ると、モデルの優位性について詳述されている一方、データ取得の具体策についてはあまり触れられていないものが少なくない。ユーザー企業自身が主体的に判断することが、AI活用の成功には不可欠となる。

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