企業などの個人情報の取り扱いを監督する個人情報保護委員会は個人情報保護法の次期改正に向けた大綱を公表した。改正の大きな焦点の1つは「リクナビ問題」の教訓を踏まえてどのような再発防止策を盛り込むかだ。

 個人情報保護法は付則で3年ごとに見直す規定があり、2020年がそのタイミングに当たる。同委員会が2020年1月からの通常国会に提出する次期法改正案にリクナビ問題は大きな影響を与えそうだ。リクナビ問題とは、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが就職活動中の学生が知らぬ間にWebの閲覧履歴などを内定辞退率の算出に使って顧客企業に販売した問題を指す。

写真 個人情報保護委員会の模様
(出所:個人情報保護委員会)
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 現行の個人情報保護法は、個人が企業の保有するデータの利用停止や削除などを請求できる要件を、企業が個人情報を不正に取得したり、目的外に個人データを使ったりした場合に限っている。企業が第三者提供の停止の請求に応じる義務も、個人の同意を得ないなど違法に第三者に提供した場合に限られる。

「個人の権利の範囲を広げる」方針が明確に

 同委員会が2019年12月13日に公表した法改正の大綱は、企業などが保有する個人データに対して、個人がデータの利用停止や消去、第三者提供の停止を請求できる要件を緩和する。「個人の権利の範囲を広げる」と明記した。

 同委員会事務局は利用停止などができる場合の想定について、「思いがけない形でデータが処理されるなど、およそ了解しなかった重大な事案などの場合は利用停止の対象にされるべきではないかと思いながら事務局として詰めている」と明らかにした。「リクナビ問題」を踏まえた検討を進めているという。

 この背景にあるのはリクナビ問題だけではない。同委員会に個人から寄せられる苦情の多さだ。同委員会が2019年4月に公表した法改正に向けた中間整理で「事業者が削除・利用停止に応じないことに関する不満などが最も多く寄せられている」と指摘している。

 同委員会事務局は、迷惑なダイレクトメールなどを例に「平穏に過ごす権利や利益を侵害しているといえるものなどを適切に判断する」と説明。「主観的な権利や利益であるプライバシー権に近いものを含めた条文にすべきだという議論をしている」と言及した。何がプライバシー侵害に当たるかは個人の主観も絡む。つまり個人の権利や利益を広く捉える条文を検討しているとみられる。

 個人情報保護の法制度の歴史に詳しい情報法制研究所 (JILIS)の高木浩光理事は2019年12月15日に都内で開かれた情報法制学会の講演で、リクナビ問題の再発を防ぐため「データによって個人の選別をする場合も利用停止などの対象に含むべきではないか」と主張した。

 単に個人のプライバシー侵害といった事態ではなく、企業が人工知能(AI)などを活用する際に、個人が不正確なデータを基に分析されて不当に選別されるといった場合を想定して、個人が拒否できるようにすべきだというわけだ。

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