ERP(統合基幹業務システム)パッケージを分割して、主力の人事モジュールのみ売却する――。ERPの開発・販売を手掛けるワークスアプリケーションズが生き残りをかけて、最終手段とも言える方法で投資会社からの支援を得ることになった。顧客企業が保守やバージョンアップを受けるためには、契約内容の見直しが欠かせない。日本発で欧州SAPなどと競合するERPベンダーを目指してきたワークスアプリケーションズは正念場を迎えた。

 ワークスアプリケーションズは2019年8月1日付で、人事関連事業を手掛ける新たな子会社を設立し、その子会社の全株式を米投資会社のベインキャピタル(Bain Capital Private Equity)に売却する。人事関連事業には、同社の創業時から販売するERP「COMPANY」と新ERPの「HUE(ヒュー)」の人事モジュール、ERPに関連する導入や保守などのサービス関連事業が含まれる。

 人事関連事業を手掛ける新会社の代表取締役には、ワークスアプリケーションズの創業者の1人であり技術部門を統括してきた石川芳郎氏が就任する。ワークスアプリケーションズ、ベインキャピタルとも人事関連事業の売却金額は明らかにしていないが、報道によると1000億円規模になるもようだ。

 ワークスアプリケーションズにとって人事関連は中核の事業で、人事モジュールの顧客数は1100企業グループに上る。同社は人事モジュールから事業を始めたこともあり、会計などの人事以外のモジュールの顧客数300企業グループと比べて4倍弱の顧客を持つ。

 MM総研が2018年11月に発表した「業務ソフトウエアの利用動向調査」では、1000人以上の大企業向けのソフトウエアのシェアで、COMPANYが「人事・給与」で16%、「就業管理」で19%のシェアを獲得し、いずれの分野でも1位になっている。ベインキャピタルは人事関連事業について「顧客基盤は強固で、優れた製品を有している」と評価している。

 圧倒的に強みを持つ人事関連事業を切り離すことで存続することとなったワークスアプリケーションズは、COMPANYとHUEの人事以外のモジュールと、グループウエアの「ArielAirOne」などの開発・販売を手掛けていく。COMPANYやHUEは、人事モジュール以外に会計とSCM(サプライチェーン管理)のモジュールを持っており、この開発やサポートを担う。同社の創業者の1人である牧野正幸CEO(最高経営責任者)が引き続きトップを務める。

ワークスアプリケーションズの牧野正幸CEO
(撮影:陶山 勉)
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保守契約が新旧会社に分かれる?製品は維持か

 今回の企業分割により、COMPANYやHUEで複数のモジュールを導入しているユーザー企業に影響が出ることは間違いない。例えば保守の契約がワークスアプリケーションズと新会社に分かれる可能性がある。

 COMPANYやHUEの特徴に「ノーカスタマイズ」や「無償バージョンアップ」がある。業務を実行するうえで必要になったり法制度に対応したりするための機能は、COMPANYやHUEの標準機能として取り込み、バージョンアップ時に実装するという考え方だ。他のERPパッケージとは大きく考え方が異なる。他社は不足機能があると外付けのアドオン(個別開発)ソフトを利用することが多い。

 COMPANYやHUEの顧客が無償バージョンアップを受けるためには、保守契約が必須となる。ワークスアプリケーションズは「保守の窓口を一本化するなど、今後の体制についてはこれから協議していく」(広報担当者)としているが、新会社と既存のワークスアプリケーションズがどの程度連携できるのか、同じレベルでサービスの提供を継続するのかなど、不透明な部分は多い。

 人事モジュールだけを利用している多くのユーザーには当面、製品を利用するうえで大きな影響はないとみられる。創業以来、技術部門のトップを務める石川氏が新会社の代表取締役を務めることから、まずはこれまでの方針で開発を継続する見込みだ。

 ただし長期的に見た場合、新会社がこれまでと同様の開発や保守の方針を貫くかは不透明だ。ユーザー企業はノーカスタマイズや無償バージョンアップなどの方針を新会社が維持するかを注意深く見守る必要がある。ベインキャピタルは「新機能のクロスセルなどを推進して、成長を支援する」としており、新しいビジネスモデルなどを構築する可能性もあるとみられる。

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