クラウドへの移行を進めても、ある程度のシステムはオンプレミス(自社所有)環境に残る。加えて複数のクラウドを利用するマルチクラウドも当たり前になりつつある。ならばオンプレミス環境も競合他社のパブリッククラウドもすべて自社クラウドの下に統合してしまおう。こうした戦略を進めているのが米IBMや米Microsoftだ。
オンプレミス環境には主要なパブリッククラウドベンダーが目を向けている。米Amazon Web Services(AWS)や米Oracleはオンプレミス環境に残るシステムを自社クラウドに乗せようと、「オンプレ版クラウド」とも呼べる製品に注力している。米Googleはコンテナを利用したアプリケーションの動作基盤となるサービス「Anthos」を発表。Anthosはコンテナオーケストレーションソフトの「Kubernetes」によって、Google Cloudだけでなく、オンプレミス環境、そして他社のクラウドサービスで同じアプリケーションが動く環境の構築を支援する。
オンプレミス環境や他社のクラウドサービスで動くオンプレミス版クラウドなどの提供に加え、MicrosoftとIBMはオンプレミスとクラウドのハイブリッド環境、そして他社のパブリッククラウドの利用を前提としたマルチクラウドを統合するためのサービスを相次ぎ発表した。
ハイブリッドクラウド戦略を転換するマイクロソフト
「オンプレミス環境だけに注力するのではなく、クラウド全体をより最適に利用するためのアーキテクチャーを提案する方針に転換した」。こう話すのは日本マイクロソフトの佐藤壮一Azureビジネス本部プロダクトマネージャーだ。マイクロソフトはオンプレミス環境にあるシステムでパブリッククラウド「Microsoft Azure」を利用するためのオンプレ版クラウド製品「Azure Stack Hub(旧製品名はAzure Stack)」を提供している。
方針転換のきっかけは2019年11月に発表したサービス「Azure Arc」だ。Azure Arcは「クラウド、ユーザー企業のデータセンター、そしてエッジなどインフラの置かれた環境を問わず、すべての企業システムのインフラ管理を目指したサービス」と佐藤プロダクトマネージャーは説明する。
現時点でAzure Arcが管理対象としているのは、コンテナオーケストレーションツールである「Kubernetes」上で稼働しているアプリケーションや、データベースサービス「Azure Data Services」だ。Microsoft Azureで設定しているポリシーなどを、Azure Arcを利用して管理しているアプリケーションやデータベースに適用することもできる。
IoT(インターネット・オブ・シングズ)で利用するエッジで稼働するデータベースからデータを集め、クラウド上に構築したデータウエアハウスに格納するといったシステムの場合「Microsoft Azureのサービスの利用の有無にかかわらず、1つのコンソールで管理できるのがAzure Arcのメリット」と佐藤プロダクトマネージャーは話す。
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