前回は、「問題を構成する5つの要素」の3つめの要素である「制御不能変数」の定義と、私がコピー機の保守担当者から学んだ修理サービスの要点を紹介した。そして、このノウハウをバイオテクノロジー業界に流用しようとしたものの、営業担当者に「できない」と却下されてしまったところまでを話した。

関連記事: 「できない」と決めつけたのは誰だ? 問題解決の科学(8)
(出所:123RF)
(出所:123RF)

 そのとき私は、コピー機の保守に関わるノウハウが、バイオテクノロジー業界の全ての装置に応用できるとは限らないことを悟り、「あまり考えなしにアイデアを吹聴するものではないな」と反省した。その上で改めて、どんな条件を持つ装置に応用できるかを考え、当時の業界の状況を整理してみた。

  1. 大学や研究所が必ず使う汎用的な装置であることが望ましい
  2. バイオ業界でリース契約はまだ一般的ではなく、装置が壊れた、またはお客さまに予算が付いたタイミングで買い替え需要が発生する(ほとんどの装置は、耐用年数を越えて10年以上使われていた)
  3. お客さまに買い替え需要がいつ発生するかを把握するすべがなく、声がかかるのを待つ「受け身」になっている(買い替え需要を狙うという発想そのものがなかった)
  4. 買い替え需要のタイミングを事前に察知できれば、他社に先んじた提案が可能になる(察知するには常に見張るか、お客さまに個別に聞くしかなかった)

 しかし私の会社にあったのは、他社にない特殊な高額製品ばかりで、条件に当てはまる製品が見当たらない。お客さまの買い替え需要を察知するには、手間がかかりそうだ。営業がいう通り「できない」じゃないか。うーむ。

3. 「できない」のは理解と工夫が足りないから

 それでも諦めきれない私は、名古屋に出張したときに、懇意にしている販売代理店の営業部長であるLさんに、この話を振ってみた。味噌煮込みうどんを食べながら話を聞いていたL部長は、目を輝かせて食いついてきた。

L部長:飯室さんの会社にも分光光度計があるじゃないですか、あれならピッタリ条件に当てはまります! うちにやらせてくださいよ。

 確かに分光光度計は「大学や研究所が必ず使う汎用的な装置」だ。間違いない。

私:分光光度計かぁ。確かにあるけど、ここだけの話、うちのは年間で30台も売れていないんですよ。バイオ市場で年間1200台売れている中で、シェアが3%もないんですから。うちが分高光度計を売っていることを知っている人の方が少ないし、無理無理、できません。もっと他になんかないかなあ?

 と、気のない返事をした途端、ぴしゃりと言われてしまった。

L部長:「できない」のは、理解と工夫が足りないからですよ。

 ストレートな言い方に少しムッとしたが、それよりも自分が営業マネージャーに否定されたときの「できない」という言葉を、自分が発していたことを恥ずかしく感じた。それでもまだ自己を正当化したくなるのが、人間の性(さが)だ。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。