「問題解決の科学」シリーズは、今回から「問題を構成する5つの要素」のうち、意思決定者が直面する4つめの要素である「制約条件」の話をする。
これまで述べてきた「問題を構成する5つの要素」は以下の通りだ。
- 意思決定者(decision maker)
- 制御可能変数(controllable variables)
- 制御不能変数(uncontrollable variables)
- 制約条件(constraints)
- 結果(outcome)

本シリーズの8話と9話では、「できる/できない」が物理的や技術的な限界によってだけでなく、意思決定者の思い込みや理解と工夫の不足によって結論づけられてしまう状況と、「できる/できない」の境界線をどうやって突破するかを説明した。ただ「できる/できない」の境界線を突破できたからといって、「後は悠々自適に~」とはいかない。次には、「どこまでならできるのか」という制御変数の制約条件(constraints)の上限と下限という課題に直面する。
関連記事: 「できない」と決めつけたのは誰だ? 問題解決の科学(8) 「できない」理由ばかり考えるな! 問題解決の科学(9)この「どこまでならできるのか」という制約条件にも2つの種類がある。1つめは、国ごとの経済や政治、法律、そして全てに共通する物理法則や自然法則などに基づく制約条件である。この制約条件よって「ここまではできるが、これ以上はできない」という上限と下限が決まる。
もう1つは、意思決定者が持つ情報や知識、理解、そして英知の欠落から派生する制約条件である。この「思い込み」ともいえる条件を、意思決定者自身が1つめの条件と同一視してしまうことで、「ここまではできるが、これ以上はできない」が決まる場合がよくある。
意思決定者が、制約条件を正しく認識できていれば、技術的な手段などを駆使して、それを解決する道を選べるだろう。しかし自身の思い込みで「もうここが上限だ」という制約を課しているとしたら、にっちもさっちもいかなくなる。
「半額まで値引きできる?」
ここからは、私がバイオ機器メーカーの大阪営業所でリーダーとして働いていた頃の体験談である。まだ外資系の営業担当者でも個人で携帯電話を持たせてもらっていなかった、そんな時代の話とお考えいただきたい。