「服用アドヒアランス不良」という言葉をご存じだろうか。患者が医師の治療方針に賛同せず、服用を指示された薬をのまずに放置することだ。

 ある文献によると、心疾患の患者が、医療の専門家である医師の指示に従わず、薬をのまない例が高い割合で存在しているという(詳しくは5ページ目のコラムを参照)。遠からずも医療に関わる仕事をしてきた私には理解できないが、「患者を病院に連れては行けても、薬は飲ませられない」状況が現実に、そして数多く発生している。

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 いきなり何の話かと思われたかもしれないが、今回は、「馬を水辺に連れては行けても、水は飲ませられない(You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.)」という話をする。これは英国のことわざで、「指導や助言をするのは簡単だが、それを実行させることは難しい」という意味だ。

 私が会社に在籍していたときに、こうした事態に陥ることが何度もあった。皆さんも職場で似た経験をしたことに思い当たるはずだ。

Facebookへの移転で情報共有が進んだ話

 2011年3月11日金曜日の午後、当時私が在籍していた会社は社内ネットワークインフラが全く使えなくなる緊急事態に遭遇した。そう東日本大震災によるシステム障害だ。

 マーケティング部門はオフィスで働くこともままならなくなり、なんとか翌日には全員が帰宅。自宅に帰り着いたメンバーに、当分は出社を見合わせるように伝えた。

 会社施設の被害はそれほど甚大ではなかったが、当面は製品出荷の見通しが立たなくなった。さらに社内ネットワークが使えなくなったことで、取引先や注文をいただいたお客さまに直接連絡する手段が絶たれてしまった。

 この問題を解決するために、自宅にいるマーケティング部の25人が情報を共有し業務に当たれる環境がどうしても必要になった。実はその約1カ月前から、マーケティング部だけで社内SNSの試験導入を始めていたが、動作も遅くて使い勝手が悪かったので、一部の新しもの好きが使う程度だった。これでは情報共有には使えない。

 そこで私は緊急事態を口実に、当時は業務での利用がご法度だったFacebookのグループ機能を使った情報共有に乗り出した。社内SNSからFacebookを使ったグループに引っ越し、ここで情報を共有するように全員に指示を出したのだ。Facebookの利用に抵抗感を持つメンバーもいたが「責任は私が取る」と言い切って、強引に押し切った。

 マーケティング部が震災後にまず取り掛かったのは、外部サーバーで運営していたWebサイトに、災害発生のお見舞いとその対策、そして製品配達の遅延についての告知を載せることだった。メンバーは不眠不休でFacebookのグループを使って連携を取り始めた。

 グループのタイムラインは、メンバーからの書き込みであっという間に埋め尽くされていった。マネジャーが指示をしたわけでもないのに、メンバーが自発的にゴールを共有し、自分の得意なことで貢献できるように役割を分担し、自分たちで決断して、仕事を進めていった。

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