私は、2016年まで32年にわたり外資系企業に所属し、バイオテクノロジー業界で働いた。その間、営業部門とマーケティング部門を行ったり来たりして、退社前の5年ほどは日本支社の経営に携わりつつ、全世界のデジタルマーケティングを統括した。
そんな私に、初めての大規模な外部講演の依頼があったのは2012年の年末のこと。日経BPコンサルティングから「マーケティング大変革」というセミナーで講演してほしいという話だった。
当時の私は、アジア全体を担当するマーケティング責任者(CMO)だったが、どういう経緯で声がかかったのかを思い出せない。話の内容を思い出そうと当時のスライドを見てみると、のっけから「マーケティングと営業の問題点」を掲げていた(以下は当時のまま、図1)。
小項目はスライドをご覧いただくとして、このときは大きく3つの問題を提起した。
- マーケティングは機能しているか
- 営業は売っているか
- 顧客は満足しているか
当時の日本企業の多くで、営業とマーケティングが互いに協力する意思を持たず、てんでバラバラに目前の問題ばかりにかまけていることを指摘している。いや、もちろん自分の会社も例外ではなかった。その上で、営業とマーケティングをどうやって連携させたのかについて、自分の経験を基に1時間ほど話した。

それから8年たった2020年に、日本経済新聞社の「日経BizGate」から「営業とマーケティングの連携」をテーマに講演依頼を受けた。東京をはじめ4カ所で話をしたが、8年前と変わらず、「営業とマーケティングの連携」に頭を悩ませている企業が多いことを実感した。そして2021年に、再度このテーマで講演することになった。
こうした依頼は自分にとってはありがたいものだが、営業とマーケティングの連携には、「これをすれば大丈夫」という絶対的な解決策は存在しない。それぞれの業界や組織個別の事情があり、私が働いていたバイオ業界の事例がそのまま役に立つとも思えない。