前回は、多くの企業がぶつかる課題として「営業とマーケティングの連携」を取り上げ、その解決のために以下の3つの本質を挙げた。
- 互いの合理性を分かり合う
- 役割分担で同じ目標を目指す
- 既存顧客からの推薦で伸ばす
その上で1.について、私自身の過去の経験から、営業とマーケティングが互いの合理性を分かり合うためにすべきことを整理した。今回は2.と3.を解説する。

2. 役割分担で同じ目標を目指す
振り返ると、私がいた会社には、営業部門とマーケティング部門に同じ目標を共有しているという認識がなかった。双方に、目標達成のために協力して役割を分担するという発想も存在していなかったといってよいだろう。
営業部門では、自分たちの目標と戦略、活動計画があって、他の部署は営業目標の達成のために協力するのが当たり前と考えていた。もちろんマーケティング部門にも個別の目標と戦略と活動計画があるのだが、営業部門にいるときは、そんな当たり前のことに思いが及ばなかった。
お客さまからは、部署に関係なく1つの会社に見えるが、会社の中では、部門ごとに自分のたちの目標を達成するのに血まなこになっていたのだ。
2012年にデジタルマーケティングの仕組みを導入するに当たり、「製品やサービスの認知から購入までのプロセス」をお客さま視点で考える「カスタマージャーニー」を採り入れることになった。「お客さま」を製品やサービスに対する興味関心度で分類して、それぞれに対するアプローチを考えるものだ。具体的には、以下の5つに分けて、それぞれのアプローチを変えていった。
(1)潜在層…製品やサービスに潜在的なニーズがあるお客さま
- 製品の価値をどこの誰に届ければ喜ばれるのか
- そのお客さまのどんな問題をどう解決できるのか
- そのお客さまを誰がどう見つけるのか
(2)顕在層…製品やサービスに顕在的なニーズを持つお客さま
- お客さまを見つけたら誰がどうアプローチするのか
- そのお客さまに誰がどう価値を提案するのか
- 競合と誰がどう戦うのか
(3)見込み客…製品やサービスを導入する見込みのあるお客さま
- 誰がどうやってお客さまに販売(クロージング)するのか
(4)顧客…製品やサービスを実際に導入したお客さま
- 買ってくださったお客さまに対し、誰が何をどうサポートするのか
- 買ってくださったお客さまにファンになってもらうために、誰が何をどうするのか
(5)ファン…導入した製品やサービスに愛着を持つお客さま
- ファンのお客さまから、誰がフィードバックをどう聞きだすのか
- ファンのお客さまからの推薦を、誰がどう潜在層へ届けるのか
- ファンのお客さまを増やすことが「生涯顧客戦略」の本質と心得る
本来なら上記のように、お客さまのジャーニーを整理して、マーケティング部門はどこまでを受け持ち、どの時点で営業部門に引き渡して、いつカスタマーサポート部門を巻き込むのかといった役割分担をしなくてはならないはずだった。