前回は、「問題とは何か?」という定義を確認した上で、実際に私たちが納品した解析システムに起因する、某研究施設の「大変な問題」への対応について説明した。さらに、その経緯を報告している途中で当時の社長に「出直してきなさい!」と一喝され、社長室から追い出されたところまでを書いた。

 今回はその解決編として、翌日に再び現地を訪れた私が、最初の対応で何をすべきだったかにたどり着くまでを解説する。

(出所:123RF)

「お客さまの問題を聞いていない」

 現地へ向かう道すがら、私は社長の「“お客さまの“大変な問題”には何一つ正面から向き合ってない」という言葉の真意を、技術部長と議論した。そして、私たちは前の日、「どのような問題に、どれだけ困っているのか」について、お客さまに全く聞いていなかったことに気がついた。

 そのときは、私たちが納めた解析システム(新型機)から煙が出たことを「大変な問題」と捉え、解析システムのトラブルの原因を徹底的に追及して、再発防止に努めることを約束した。その上で、新型機の導入を後押ししてくれたセンター長の顔に泥を塗らないため、研究者たちに謝罪して回った。さらに、数百万円相当のアップグレードを無償ですることも提案した。

 しかしそれらはその場を収め、「私たちにとっての大変な問題」の幕引きを図るためでしかなかった。それまで解析システムがあまり動いていなかったことも認識していたが、これは精度や感度がスペック通りに出ないという技術的な問題や、操作や運用方法などの利用面での問題、設計や製造方法にいたる製品に関わる問題として捉えていた。

私たちにとっての大変な問題
大変な問題目標現状
劣化もしくは事故で機器が正常に動かない正常稼働異常(焦げた)
センター長の顔に泥を塗った面目が立つ責任問題
研究者たちを怒らせた怒っていない怒ってるはず
評判が地に落ちる論文が出てしまう論文で評価されるダメなデータ

 これらの「大変な問題」は、自分たちの視点から見ていたもので、お客さまから見た「大変な問題」とは区別ができていなかった。これは確かに、私たちの失敗だった。

 つまり原因追及よりも先にすることは、おわびでも、無償アップグレードの提案でもなかった。まず「お客さまにとっての大変な問題」に目を向ける行動だったのだ。

 私たちは「自分たちにとっての大変な問題」の解決ばかりに気を取られ、それがイコール「お客さまにも大変な問題」だと思い込んでいた。本当の「お客さまにとっての大変な問題」を知ろうともせず、それを解決するための行動には全く意識が及ばなかったのだ。

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