前々回と前回は、私たちが納品した解析システムが引き起こした某研究施設の「大変な問題」を基に、問題を定義する意思決定者であるお客さまの目標と現状を確認する大切さを解説した。

 このときは、問題解決までの過程を「問題を構成する5つの要素」に当てはめながら、私たちが取り得る選択肢(制御可能変数)と制御不能変数を意識し、その上で成果と因果関係がある変数を選択していった。

 問題を構成する5つの要素を、以下に改めて示しておく。

  1. 意思決定者(decision maker)
  2. 制御可能変数(controllable variables)
  3. 制御不能変数(uncontrollable variables)
  4. 制約条件(constraints)
  5. 結果(outcome)

 今回と次回は、5つの要素のうち「1.意思決定者(decision maker)」が下す「何が実現可能か」という判断について、具体的な事例を基に説明する。意思決定者の「目標」の持ち方(志向性)が「思い込み」という制限を形成してしまうところ、そして意思決定者の目標の持ち方次第でその思い込みを打破できるところを見ていただきたい。

(出所:123RF)

「普段から、そんな仕事の仕方をしているのか、君は?」

 もう30年近く前の話だ。販売代理店の営業部長であるHさんから「どこかに大型の研究所が新設されるらしいが、全く情報がない。お前、その話、知ってるか?」という相談を受けた。インターネットが一般的ではない当時は「ググる」ことは不可能で、日本のバイオテクノロジー業界に業界新聞というものがなかったため、噂(うわさ)や口コミ、人脈に頼るかしかなかった。

 当時の私は、製薬会社や大学研究施設の研究者をお客さまとして、ある販売地域を受け持つ一介の営業担当者だった。研究者から受けた相談から問題を解決していくという技術営業に近いスタイルで、私たちの製品を買ってもらっていた。

 こうした仕事のやり方では、新規顧客の開拓はせいぜい担当施設の中だけで、新設される研究所の話が耳に入ることはない。それでもHさんとあちこち嗅ぎ回って、ようやく近隣の都市に大型の研究所が建設中であること、そしてQ社というバイオテクノロジーとは畑違いの会社が設立に関わっていることまでつかんだ。

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