前回は、営業本部長から権限を与えられた私が、「もう自分以外の誰も決めてくれない」という「全権限を持つことの本質」にたどりついたところまでを書いた。

 今回は「権限を委譲する側」の立場から、上司としての覚悟と決断の重要性について、そして私自身が陥った「時間泥棒」の罠について考える。

(提供:123RF)

権限を委譲する立場になった私

 前回の話から10年くらいのうちに、私は営業本部長やマーケティング本部長を経験して、会社の経営にも関わるようになっていった。

 その間に私たちの会社(買収前はアマシャム・バイオサイエンス)は、2004年に米GEヘルスケアに買収されて、同社のライフサイエンス部門となっていた。新会社は、GEグループの高い信用力と財務力を背景に、2008年ころからヘルスケア分野の企業や事業を相次いで買収していった。

 その結果として急増した新製品の日本市場への展開は、当然ながら日本法人のマーケティング部門の役割となる。しかし急激な買収ラッシュには追い付かず、人手も人材の経験も足りなくなってしまった。

 この時点で、日本法人の新製品導入プロジェクトは全部で八つになっていた。当時マーケティング本部長だった私は、苦肉の策として社内の全部署から人材を集め、部署横断型の新製品導入プロジェクトを立ち上げた。対象となった部署は、営業やマーケティングだけでなく、内勤の学術部門や外勤のアプリケーションスペシャリスト部門、製品の修理やメンテナンスを担当する技術部門、そして人事や経理部門までに至った。

 通常ならプロジェクトのリーダーは、マーケティング部門のマネージャークラスを任命するところだ。しかし、マーケティング部門だけでは人材が足りない。

 やむなく、リーダー役を任せる対象を他部門から加わったメンバーにも広げ、マネージャー経験の有無も問わないことにした。リーダーを任せるには2~3年早い若手を抜擢して業務を担わせ、これを日本法人にとっての「人財育成のチャンス」と位置づけた。

 マーケティング本部長の私は、若手リーダーたちに権限を委譲する立場だった。当初の私は、各プロジェクトのリーダーに権限を譲る気に満ちあふれていて、八つのプロジェクトは私を含めた経営陣4人がコーチングするように設計した。

この先は日経 xTECH Active会員の登録が必要です

日経xTECH Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。