前回は、「問題を構成する5つの要素」の2つめの要素である「制御可能変数」の定義と、私たちの業務で不足していた制御可能変数である「プロダクトマネージャー」を増やした経緯を紹介した。さらにインターンの学生の一言をきっかけに、「多様性のある仲間と協働する」ことの必要性に気がついた私が、「今までやったことのない新製品導入プロジェクトを立ち上げる」決意をしたところまでをお話しした。

(出所:123RF)
制御可能な変数を増やす方法として、私は3つの案を説明していた。
- プロダクトマネージャーを外部から調達することで、「制御可能変数に足りない分を加える」
- 多様性のある仲間と協働することで、「全く新しい制御可能変数を見いだす」
- 原因を排除するより活用することで、「捨てた制御可能変数を別の変数に転用する」
1.は前回解説したので、今回は、2.と3.を中心に話を進める。
多様性のある仲間との協業で目指したこと
私が在籍していた会社では、マーケティング部門のプロダクトマネージャーは、上司に経過を報告することはあるものの、1人で作業するのが基本だった。新製品を国内市場に導入する場合は、製品販売とアフターサービスに関わる営業部門の他、物流部門や学術部門、そして修理を担当するエンジニア部門に相談しながら準備をする、というのが普通の進め方だった。
相談相手となる他部門とは“お願いベース”で話をすることが多く、正式に連携して仕事をすることは少なかった。マーケティングという専門性が高い分野で、責任を持って成果を出すのが基本だった。
当時の私たちの会社は200人ほどだったが、それでも複雑な分業が進み、部門ごとに分断され、見えない壁が出来上がっていた。同様に、「縦割り組織」と呼ばれる中で活動を余儀なくされている方も多いのではないだろうか。
この傾向がさらに進むと、組織が“個人商店”の集まりとなる。これでは組織として働く意味が薄れ、価値観や行動様式の異なる個人の「多様性」を生かせなくなる。せっかくの「多様性」を生かせずに仕事をする体制は、自らに制約を課して、制御可能な変数を減らしているようなものだ。
「多様性の摩擦」を解説した関連記事:「馬が自ら水を飲む」ための発想転換、技術的問題と適応課題(後編)