本連載はこれまで、オムロンの竹林一氏による「製造業がイノベーションをデザインするための視点」を論じてきた。約1年にわたる連載の締めくくりとして今回から3回シリーズで、元GEヘルスケアでグローバルのビジネスを経験したB2Bファシリテータの飯室淳史氏と竹林氏による、「イノベーション」をテーマとした対談を掲載する。

 まず多くの日本企業が追いかけてやまない「イノベーション」の考え方について議論していただいた。

(聞き手は松本 敏明=日経 xTECH Active)

最初に、お二人が知り合ったきっかけからお話しください。

竹林 一(たけばやし・はじめ) オムロン イノベーション推進本部 インキュベーションセンタ長
伝統的機業地として知られる京都・西陣生まれ。1981年、ソフトウエアエンジニアとして立石電機(現オムロン)に入社。新規事業として鉄道カードシステム事業、モバイル事業、電子マネー事業に携わった後、オムロンソフトウェア、オムロン直方(EMS事業)の構造改革、ドコモ・ヘルスケアの設立・黒字化など会社経営を経て本社に戻り、センシングデータ流通市場(SDTM)の立ち上げなどに取り組んでいる。2019年4月から現職。京都大学経営管理大学院客員教授。(撮影:新関 雅士)
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飯室:2012年ころに、あるイベントで、サービスサイエンス関連の本をいくつも書かれている諏訪良武さん(現ワクコンサルティング 常務執行役員 エグゼクティブコンサルタント)と知り合う機会がありました。その時「面白い人物を紹介するから」と真冬の八ケ岳に誘われて、雪に埋もれた山荘で竹林さんを紹介されたのが最初です。

竹林:諏訪さんはかつてオムロンでワークステーション事業やサービス事業などを立ち上げてこられた方で、私にとってはサービスサイエンスの師匠でもあります。

 2000年ころ、自動改札機のビジネスがハードウエア主体からサービス主体へ切り替わろうとしているときに、諏訪さんに相談したところ、「君はサービスの本質を分かっていない」と言われました。その後に就業時間外に開いているサービスサイエンスの勉強会に誘っていただだき、それ以来のお付き合いです。

イノベーションは顧客が決めること

2000年ころとは、連載で取り上げた「パスネット」などプリペイドカード式の乗車カードを自動改札機で読み取るサービスが登場したあたりでしょうか。今でこそ駅の改札は自動改札機にタッチするだけで通れ、カードは日本中で使えますが、昔は券売機で切符を買わなければならず、カードは特定のエリアだけでしか使えませんでした。これだけの変革をもたらしたアイデアはどこから生み出されたのでしょう。

竹林:自動改札機はもともと、高度成長期の利用者増加に対して駅員さんの業務を代替する一種のロボットとして生まれました。

 さらに利用者の利便性向上を目的として、切符を買わなくても済む(パスネットなどの)磁気カードが登場し、それがチャージ可能な(SuicaやPASMOなどの)ICカードに代わってカード自体も毎回購入する必要がなくなりました。

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