オムロンの竹林一氏とB2Bファシリテータである飯室淳史氏のイノベーションをテーマにした対談は最終回を迎えた。議論が進むうち、社会的課題を解決するイノベーションを実現するカギは、企業が進むべき「軸」をどう定めるか、そしてその軸に沿ったアイデアや技術をどの「タイミング」で出すかという二つが握っているという方向性が見えてきた。

(聞き手は松本 敏明=日経 xTECH Active)

技術には「広がるタイミング」がある

前回は、「起承転結」型人材の中で、企業の進む「軸」を定める「承」人材の役割が重要という話でした。これに関連して、竹林さんは以前、新規事業の難しさを「1000のアイデアカプセルを沈めておき、タイミングを見計らって浮上させること」に例えていました。「カプセルをどこに沈めるか」とは「軸を定める」ことであり、「いつ浮上させるか」という「タイミング」を計ることと併せて、とても重要ということですね。

竹林:「1000個のカプセル」論はもともと、新規事業の話をしている中から出てきたものです。そしてこれは、新技術開発にも当てはまります。

竹林 一(たけばやし・はじめ) オムロン イノベーション推進本部 インキュベーションセンタ長
伝統的機業地として知られる京都・西陣生まれ。1981年、ソフトウエアエンジニアとして立石電機(現オムロン)に入社。新規事業として鉄道カードシステム事業、モバイル事業、電子マネー事業に携わった後、オムロンソフトウェア、オムロン直方(EMS事業)の構造改革、ドコモ・ヘルスケアの設立・黒字化など会社経営を経て本社に戻り、センシングデータ流通市場(SDTM)の立ち上げなどに取り組んでいる。2019年4月から現職。京都大学経営管理大学院客員教授。(撮影:新関 雅士)
[画像のクリックで拡大表示]

 新技術開発に割けるリソースは無限ではありません。企業の進むべき「軸」を定めたうえで、それに沿ってアイデアのカプセルを沈めるのですから、その時点で経営判断を下している必要があります。これは企業だけではなく、研究所や大学にもいえることです。最初の軸を間違えてしまうと、もうどうにもなりません。

 仮に定めた軸上にカプセルが沈められていたとしても、浮上させるタイミングが合わなければ失敗します。早すぎればライバルに手の内を明かすことになりますし、遅すぎれば「なぜウチはやっていなかったんだ?」という集中砲火を社内から受けます。

 もちろん、他社の動きを見てからでは手遅れになります。タイミングを読む「感覚」を研ぎ澄ましておかなくてはなりません。

飯室:どんな優れたアイデアでも、タイミングを誤れば「早すぎたね」で片付けられてしまいます。その理由を探ってみると、「(そのアイデアに対する)ニーズがない」のではなく、「ニーズがあることに、まだ誰も気づいていない」場合が少なくありません。

この先は日経 xTECH Active会員の登録が必要です

日経xTECH Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。