オムロンの竹林一氏とB2Bファシリテータである飯室淳史氏のイノベーションをテーマにした対談は最終回を迎えた。議論が進むうち、社会的課題を解決するイノベーションを実現するカギは、企業が進むべき「軸」をどう定めるか、そしてその軸に沿ったアイデアや技術をどの「タイミング」で出すかという二つが握っているという方向性が見えてきた。
技術には「広がるタイミング」がある
前回は、「起承転結」型人材の中で、企業の進む「軸」を定める「承」人材の役割が重要という話でした。これに関連して、竹林さんは以前、新規事業の難しさを「1000のアイデアカプセルを沈めておき、タイミングを見計らって浮上させること」に例えていました。「カプセルをどこに沈めるか」とは「軸を定める」ことであり、「いつ浮上させるか」という「タイミング」を計ることと併せて、とても重要ということですね。
竹林:「1000個のカプセル」論はもともと、新規事業の話をしている中から出てきたものです。そしてこれは、新技術開発にも当てはまります。
新技術開発に割けるリソースは無限ではありません。企業の進むべき「軸」を定めたうえで、それに沿ってアイデアのカプセルを沈めるのですから、その時点で経営判断を下している必要があります。これは企業だけではなく、研究所や大学にもいえることです。最初の軸を間違えてしまうと、もうどうにもなりません。
仮に定めた軸上にカプセルが沈められていたとしても、浮上させるタイミングが合わなければ失敗します。早すぎればライバルに手の内を明かすことになりますし、遅すぎれば「なぜウチはやっていなかったんだ?」という集中砲火を社内から受けます。
もちろん、他社の動きを見てからでは手遅れになります。タイミングを読む「感覚」を研ぎ澄ましておかなくてはなりません。
飯室:どんな優れたアイデアでも、タイミングを誤れば「早すぎたね」で片付けられてしまいます。その理由を探ってみると、「(そのアイデアに対する)ニーズがない」のではなく、「ニーズがあることに、まだ誰も気づいていない」場合が少なくありません。
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