今回も、過去10年の日本のクラウドを取り巻く動向を振り返る。第3回となる今回は、ここ数年の企業のクラウド導入・移行にかかわる2つの方向について解説する。

(出所:123RF)

 2016年ころから、企業のシステムを「Systems of Record(SoR)」と「Systems of Engagement(SoE)」という2つのキーワードで分類する考え方が広まった。

 「Systems of Record(SoR)」とは、直訳すると「記録のためのシステム」となり、堅牢(けんろう)性や安定性、継続性を重視する基幹システムを指す。「Systems of Engagement(SoE)」は顧客や消費者とのエンゲージメント(つながり)を優先し、企業のビジネス変革や新ビジネス創出などを実現するシステムを指している。

 そしてこの2種類のシステムには、クラウド導入・移行の進め方に大きな違いが見られた。

既存システムとの互換性を重視する「リフト&シフト」

 基幹システムに代表されるSoRのクラウド導入・移行に対して、多くの企業は慎重な姿勢で臨んだ。オンプレミスの既存システムとの互換性や継承性を重視していたからだ。

 これらの企業では、セキュリティーや独自の環境を維持して、自社専用に構築・運用する「プライベートクラウド」 を採用するケースが少なくなかった。利用者を限定しない「パブリッククラウド」に全ての環境を移行することはまれで、新規のシステムからパブリッククラウドを導入して、徐々にその範囲を広げていくという手法が一般的だった。

 既存システム変更を加えることなくクラウドにそのまま移行(Lift)することを最優先とし、その後にシステムをクラウドに最適な環境に変更(Shift)していく考え方は、「リフト&シフト(Lift-and-shift)」と呼ばれるようになった。

 オンプレミスからクラウドサービスへ移行する際には、コスト削減を優先して仮想サーバーを採用する場合が一般的だった。 特に2016年ころの国内のクラウドサービス事業者は、仮想サーバーを中心にサービスを展開していた。

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