ガートナー ジャパンは2019年10月31日、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表した。この中で「クラウド・コンピューティング」を、実質的な市場浸透が始まる「啓蒙活動期」に位置づけている。

図●日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年
出所:ガートナー ジャパン 
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 同ハイプ・サイクルの2009年版でクラウドは、成果を伴わないまま過熱気味にもてはやされる「過度な期待のピーク期」にあった。それから6年ほど、熱狂が冷めて市場がいったん停滞する「幻滅期」にあったが、それを経て現在の啓蒙活動期となったとガートナーは指摘する。

 本連載では今回から3回にわたり、この10年間のクラウドの動向を振り返ることにした。日本企業にとってクラウドを3期に分け、個別に解説する。

(1)2009年~2012年
米国ベンダーの日本リージョンのセータセンター開設と東日本大震災後のシステム構成の見直し(日本企業のクラウドへの意識変化)

(2)2013年~2015年
マイクロソフトのPaaS(Platform as a Service)からIaaS(Infrastructure as a Service)へのシフトと、グーグルの参入をきっかけとしたクラウド事業者の変化(事業者収れんの始まり)

(3)2016年~2019年
ハイブリッド、マルチクラウドとリフト&シフト(企業の現実的な導入/移行手法の確立)

クラウド対応を迫られた日本のSIベンダーたち

 企業が利用するクラウドサービスは、2006年の米アマゾンウェブサービス(AWS)のオブジェクトストレージサービス「Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)」と仮想マシンサービス「Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)」で始まった。両サービスのコストや利便性を高く評価した企業が、サービス導入の検討を始めた。

 米国でのクラウドサービス登場から数年後、その広がりに危機感を持った、日立製作所やNECや富士通をはじめとする国内SIベンダーや、ニフティやさくらインターネットなどのインターネット事業者などが、2009年から2010年にかけて相次いでクラウド戦略を発表した。今から10年前は、日本国内でクラウドサービスの提供が相次いで始まった時期といえる。

 日本のSIベンダーの多くは、主な収益を企業からの受託開発やシステム構築運用であげていた。クラウドであれば、受託型でなくても柔軟なシステム構成が可能となる。日本のベンダー各社は事業モデルの見直しを迫られることになった。

 日本企業からのクラウドへの注目度は、AWSが東京にデータセンターを開設した2011年3月に高まった。それまでは日本もAWSの米国リージョンの一部で、データの実体は海外のデータセンターにあった。日本の法制度を適用できない海外にデータが存在することが企業のリスクとなっており、利用の際にはデータ転送遅延が発生することが問題となっていた。

 東京データセンターのサービス開始によって、リスクや問題は解消される。企業の海外クラウドサービスに対する心理面での不安や性能面の不満を下げ、その採用の機運を後押しした。

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