欧州SAPは2020年2月、ERP(統合基幹業務システム)パッケージ「SAP ERP」の標準保守期限を、2025年から2027年に延長すると発表した。ユーザー企業は、SAP ERPの後継製品である「SAP S/4HANA」への移行検討に充てられる時間が延びたことになる。これまでいわれてきた「SAPの2025年問題」は、「2027年問題」に名前を変えた格好だ。

S/4HANAへの対応は3本の分かれ道

 ガートナーではSAPのユーザー企業を3つのタイプに分類し、タイプごとにS/4HANA移行検討方法を提案している。

 1つめが「戦略的な採用企業」、つまり迷いなくS/4HANAへの移行に突き進める企業を指す。ユーザーの2~3割がこのタイプで、自動車にたとえると、目的地まで高速道路を使うイメージとなる。

 2つめが「戦術的な採用企業」で、5~6割のユーザーがこれに当たる。高速道路には乗らず目的地まで一般道を行くイメージだ。

 3つめが「採用予定のない企業」で、迂回(うかい)路、またはほかの道へ行くイメージだ。残りのユーザーがこれに当たる。第三者の保守サービスを受けながら現行システムを使い続け、S/4HANAの後継を待ったり、他のベンダーに乗り換えたりする。後継を待つという意味で「1回休み」と称する企業もある。

 ユーザーが、自身が3タイプのどれに当たるのかを見極める際には、SAPの戦略とS/4HANAへの移行のメリットを評価する必要がある(図1)。

図1●SAPの戦略とS/4HANAへの移行のメリットという2つの視点で自社がどの道に進むかを決定する
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 SAPが自社の長期戦略にとって必要不可欠なパートナーかどうかは、トップダウンで決める問題だ。経営陣や事業部門のリーダーが、SAPの最新戦略を踏まえてIT部門と十分に議論するべきだ。

 その際には、現状を踏まえて、今後どの程度まで意識的にSAPの戦略に“どっぷり浸(つ)かる”のかを明確にすることを薦めたい。S/4HANAがカバーする全領域のアプリケーションを使うのか、あるいは一部にとどめるのか。例えば会計など、ごく一部の機能しか使っていない場合に、「コストをかけ、リスクを取ってS/4HANAに移行するべきか」を検討する。

 移行のメリット評価は、ボトムアップで進める。具体的には次の6項目となる。

  1. 処理が高速化した場合のインパクトの検証
  2. リアルタイム・アナリティクスが効果を発揮する領域の特定
  3. 新しいUXである「Fiori」による役割ベースのアプリケーションの精査
  4. 「Central Finance」などの新機能の評価
  5. データベースサイズの縮小やアーキテクチャーの簡素化などIT面での効果の確認
  6. 新たなビジネスモデルや変革施策の支援余地の議論

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