ガートナー ジャパンは、2019年11月に「日本におけるCRMのハイプ・サイクル*1」の最新版を発表した(図1)。2019年は、顧客の体験(カスタマー・エクスペリエンス)を重視する製品・サービスが注目を呼んだ。具体的には、製品・サービスを定期的に一定料金で提供する「サブスクリプション管理」や顧客との関係強化を下支えする「顧客エンゲージメント・ハブ」などがこれに当たる。
同ハイプ・サイクルでは、「サブスクリプション管理」と営業現場の活動を支援する「営業エンゲージメント・プラットフォーム」を新たな要素として追加した。
サブスクリプション管理に欠かせないカスタマーサクセス
カスタマー・エクスペリエンス(Customer eXperience:CX)とは、製品やサービスを通じたやり取りの中で、企業から顧客が得る認識や感情のことである。このCX向上がビジネス拡大に欠かせないと考え、顧客視点で業務を改善し、顧客のニーズを捉えた施策を展開する企業が増えている(図2)。
2019年の日本におけるCRMのハイプ・サイクルで新たに取り上げた「サブスクリプション管理」も、CX向上が前提となっている。そのためのアプリケーションは、顧客との契約までのやり取りにとどまらず、その後のサポートやサービスを通じ、顧客との関係を強固にする機能を備えている。
企業からガートナーに寄せられる質問でも、サブスクリプション管理に関するものが増えてきた。こうしたとき私は、サブスクリプション型のビジネスは利用者側には導入時に大きな負担がかからない半面、提供者側に先行投資が必要になることを説明している。
*1 ハイプ・サイクルは、企業がテクノロジーやアプリケーションに何を期待できるのかを理解できるようにガートナーが開発したもので、横軸に「時間の経過」を、縦軸に「市場からの期待度」を置く2次元の波形曲線で表す。テクノロジーやアプリケーションが市場に受け入れられるまでは、総じて同じ経過をたどる。初めて市場に登場した後に、期待は急上昇するが(黎明期)、成果を伴わないまま過熱気味にもてはやされ(「過度な期待」のピーク期)、熱狂が冷めると市場がいったん停滞し(幻滅期)、改めて実質的な市場浸透が始まり(啓蒙活動期)、成熟したテクノロジーとして市場に認知される(生産性の安定期)というステップを踏む。