年が明けて「一年の計は元旦にあり」との思いで過した人も多いことだろう。しかし、2020年が本格的に動き出して半月がたった今、一年の計が既に地平線の彼方に沈んではいないだろうか。「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」。新年は必ず来るが、同じ思いで迎えられるとは限らない。できれば、昨年は頑張った、今年は一層良い年にしようと前向きに年の初めを迎えたいものだ。それには、日々の過ごし方が大切なことは言うまでもない。今年は、松の内の2つの出会いがこの思いを強くした。

 1つは、記事との出会いだ。私は、新聞を3紙、月刊や週刊の雑誌も複数購読している。ほとんど読み流すだけだが、年初に印象に残る記事に出会った。日経ビジネス(1月6日号)に掲載された米マイクロソフト(Microsoft)副社長の平野拓也氏へのインタビュー記事だ。「居心地が良いと、結局同じことをやり続けてしまう」という趣旨のことが載っていた。「変化に対応するには、自らも変わらなければならない」という企業トップの年頭挨拶の例もある。忙しさを理由に同じことを続けて1年を過ごしてはいけない、ということだ。

 私もかなり耳が痛かった。ものづくりの世界は100年に1度と言われる変革期を迎えている。自分自身や職場が同じことだけをやり続けていると、取り残される可能性が高くなるという指摘だ。

 もう1つは、日ごろ弊社を支援してくださる方が昨年受勲され、その祝賀会での出会いだ。おとそ気分が冷めやらぬ日に、その会は催された。参加メンバーは受勲した方の元研究室の出身者やその関連の人たちだ。私はというと、日頃お世話になっているという理由だけでその場に紛れ込んでいた。キラキラと輝く勲章を間近に拝むのは初めてだった。受勲した方が演台で「受勲は、私の研究室出身者全員の成果です」とおっしゃった。会場がなにやら明るいので会場をグルっと見渡すと、その場の全員がキラキラしていた。皆の思いが輝いていたのであろう。一年の計はともかく、今年よりは来年をより良くとの思いを持ち、今を迎えた方々の集まりと感じ入った次第だ。

 年初の思いを持ち続けることは簡単ではない。現実的な方法を1つ挙げると、職場で期の初めに行う目標設定に思いを取り込むことだ。少し背伸びをしてほしい。

 自分の職能等級(職場の能力レベル)を踏まえ、平均的なレベルの目標(Standard)、高いレベル(High)、かなり高いレベルの目標(Super)の3つを設定するとする。皆さんはどのように目標を配分するだろうか。

目標の1/2はHigh、1/4はSuperを設定すべし

 Standardのみを目標とし、期の終わりに100%達成していることを目指す。これも選択肢の1つだ。しかし、これだけでは、冒頭に述べた「居心地が良い、年年歳歳同じことを繰り返しつづける」ことに陥りかねない。Standardだけではなく、高いレベルを取り込むことが大切だ。

 どの程度が良いか。欲を言えば、目標の1/2はHigh、1/4はSuperを設定してほしい。その目標に向かって1年間取り組み続けるのだ。期の終わりにSuperの目標は50%も成して遂げていないだろう。しかし、落胆することはない。翌年、翌々年にはその高い目標を達成できる。その大きな一歩を踏み出したのだ。大きく成長する一歩を踏み出せたのである。大きく背伸びをした取り組みを通じて、人は大きく成長できる。 

 第57回のコラムで、プロフェッショナルとは「持てる力を最大限発揮し続ける人」であり、このような人からなる組織は、どれほど困難な条件でも結果を出せる。従って、全員がプロフェッショナルとしての思いを持ち続けねばならない──と述べた。それには、Highや Superの目標を掲げることが第一歩だ。

 こうも言える、Superの目標の最たるものは「世界No.1」の目標値を設定することだろう。その世界No.1の切り口は、第48回のコラムで取り上げたように身近にある。ぜひ、期の初めの目標設定で世界No.1の切り口を探してほしい。きっと見つかる。それを一年の計として取り組み続けることで、今年が皆様にとって良き年となることを願っている。

寺倉 修 氏 (てらくら おさむ)
ワールドテック 代表取締役
寺倉 修 氏 (てらくら おさむ) 実務経験に基づく真の「設計力」を定義し、実践的設計論を説く設計分野の第一人者。 1978年、日本電装(現 デンソー)入社。車載用センサーおよびアクチュエーターの開発、設計業務に従事。日本初のオートワイパー用レインセンサー開発、レクサス搭載を実現したほか、20種類以上の車載用センサー、アクチュエーターを開発、設計。 2005年、ワールドテック設立。製造業への開発・設計・生産などの技術を支援。 2010年、東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センター(MMRC)コンソーシアムで「モノづくりを支えるもう一つの力『設計力』」と題して講演。企業活力研究会「平成22年度 ものづくり競争力研究会」委員。 2014年、東京大学大学院経済学研究科 MMRCコンソーシアムで「『設計力』を支えるデザインレビュー」と題して講演。