盆休みが明け、「さあ、頑張ろう」という読者は多いだろう。職場の全員がそうありたいものだ。中でも、リーダーの思いや取り組み姿勢が重要となる。リーダーの休み明けのありようが、職場のメンバーの思いや姿勢に大きく影響する。これまで取り上げてきた開発設計のありようは、実は「開発設計リーダーのありよう」を取り上げてきたのだ。

 今回は、リーダーがぜひ意識してほしい取り組みやスタンスを「25カ条」として紹介する。

 こう言うと、自分は職場の管理者の立場にあるが、ここで開発設計リーダーと管理者は同じなのかと疑問を持つ人もいるだろう。筆者は、開発設計リーダーと管理職の違いを次のように考える。

開発設計リーダーと管理者の違い

 リーダーとは、「目標を高く掲げ、リスクを恐れずに、常識にとらわれることなく創造と変革に挑戦し続ける人。世界がやっていないからやる、そのような思いを持ち続けることができる人」だ。

 一方、管理者とは、「与えられた目標と現状とのギャップを認識し、決められたことを抜けなく正確に実行し、目標に向かって着実かつ効率的に業務を実践できる人。そして、組織の継続と成長を取り組み続ける人」。

 両者の違いを製品の開発設計に当てはめると、こうだ。

 第22回で取り上げたが、製品は新規性の視点で4つに分類できた。新規性の高い順に、[1]革新的な製品、[2]次世代製品、[3]次期型製品、[4]類似製品だ。新規性が高いものほど開発設計のリスクは高まる。革新的な製品はもちろん、次世代製品や次期型製品の一部が該当する。これらにはリスクへの挑戦を恐れず、創造と変革の取り組みが必要だ。

 一方、既存の技術で対応できる新規性の比較的低い次期型製品や類似製品は、正確性と効率的な設計を旨とせねばならない。確実に抜けなく実行することが求められるのだ。

 上記のリーダーと管理者の表現を踏まえると、次期型製品や次世代製品、革新的な製品を推し進める人は、開発設計リーダーでなければならない。逆に、新規性の低いそれ以外の製品は、抜けなく正確な仕事が実践できる管理者が適していることになる。

 ところで、第40回で開発設計のプロセスは、先行開発段階と量産設計段階から成ることを取り上げた。先行開発は次世代製品と次期型製品に必要であった。もう気づいていると思うが、先行開発は開発設計リーダーが推進せねばならないということだ。正確さだけを旨とする守りに徹した管理者では務まらない。

 ただし、業務が進んで先行開発段階から量産設計段階に移行すると、開発設計リーダーにも、決められたことを正しく遂行する正確性と効率性が求められる。つまり、先行開発と量産設計を一気通貫で行う職場では、開発設計リーダーにも管理者の素養が必要になるというわけだ。

 かつて、筆者が経験した職場では先行開発と量産設計を同じチームが担当していた。職場の管理者が開発設計リーダーを兼ねていた。今でも日本企業にはそうした職場が多いのではないか。つまり、管理者は革新的かつ創造的であるとともに、正確かつ効率的な取り組みを意識せねばならない。オールラウンドであらねばならないし、それを目指さねばならないのだ。その指針となる「開発設計リーダー25カ条」を以下に示す。

開発設計リーダー25カ条

  • (1)「図面は全社で描く」。設計、品質、生産技術、生産など各部門の関係者全員の知恵・知見を入れてまっとうな図面となる
  • (2)「自然はだませない」。壊れる可能性のあるものは、必ず壊れる
  • (3)製造業は自然が相手の「自然を加工する業」
  • (4)図面に書かれたことは全て「理論で説明」でき、試験・実験で「定量的に検証」できていなければならない
  • (5)品質不具合を減らすには、過去の経験を今の仕事に「関連づける」
  • (6)失敗では「技術上」と「管理上」の教訓を共に残す。管理上の教訓は「仕組み」に反映する
  • (7)デザインレビュー(設計審査)は「総知・総力」を注ぐ「気づき」の場
  • (8)デザインレビューは「準備が8割」。準備の段階で多くの気づきが生まれる
  • (9)決裁会議は「真剣勝負」の場。報告者はプライドを懸け、決裁者は相応の心構えで臨む
  • (10)技術検討のみならず、「組織間を束ね」、「顧客と技術折衝」ができて初めて「設計者」となる
  • (11)問題解決の「99%」はまだ「5合目」。残りの課題に設計工数の50%を注ぐ
  • (12)設計手順は、基本プロセスとサポートプロセス、マネジメントプロセスの「3つのプロセス」から成ることを説明できること
  • (13)「設計目標値」を決めた時点で、勝つか負けるかは既に決まっている
  • (14)設計目標値のQ(品質)、C(コスト)、D(納期)は「定量的な根拠」を踏まえる
  • (15)設計は結果と共に、そこに至った定量的な根拠を大切にする
  • (16)設計と製造は、適度な緊張感で「全循環的スパイラルアップ」させる
  • (17)製品固有技術は深く、関連する要素技術は抜けなく幅広く知る
  • (18)現場へ行くと「待っていました」と言ってもらえる設計者の図面はレベルが高い
  • (19)「技術は必要条件」「管理や仕組みが十分条件」、両立すれば不具合は減る
  • (20)設計段階で品質もコストも8割が決まる。図面に間違いがあってはならない
  • (21)開発設計リーダーは「競合に勝つ」設計、「顧客からの信頼を得る」設計を意識する
  • (22)忙しいからと設計手順を飛ばすのは品質不具合を許すこと
  • (23)品質とコストにこだわり、納期は厳守する、新たな技術・製品へ果敢にチャレンジする
  • (24)判断をむやみに先送りしない。最小限のデータで最適な判断をする
  • (25)同じ汗をかくなら世界No.1を目指す。設計者だからこそ可能だ

 休み明けの今こそ、開発設計リーダーは25カ条をかみしめてほしい。 

寺倉 修(てらくら おさむ)
ワールドテック 代表取締役
寺倉 修(てらくら おさむ) 実務経験に基づく真の「設計力」を定義し、実践的設計論を説く設計分野の第一人者。 1978年、日本電装(現 デンソー)入社。車載用センサーおよびアクチュエーターの開発、設計業務に従事。日本初のオートワイパー用レインセンサー開発、高級車「レクサス」への搭載を実現したほか、20種類以上の車載用センサー、アクチュエーターを開発・設計。 2005年、ワールドテック設立。製造業への開発・設計・生産などの技術を支援。2010年、東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センター(MMRC)コンソーシアムで「モノづくりを支えるもう一つの力『設計力』」と題して講演。企業活力研究会「平成22年度 ものづくり競争力研究会」委員。 2014年、東京大学大学院経済学研究科 MMRCコンソーシアムで「『設計力』を支えるデザインレビュー」と題して講演。著書に『世界No.1製品をつくるプロセスを開示 開発設計の教科書』(日経BP)などがある。