2021年の幕が開いた。昨年(2020年)はコロナ禍一色だったが、それでも明るい話題もあった。小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰還。6年間で50億km以上の旅をして、火星と木星の間の小惑星帯にある小惑星「リュウグウ」の岩の粒を持ち帰った。

 はやぶさ2の成功は、中小企業の技術にも支えられた。高速で落下するカプセルから無事に開いたパラシュートは、福島県田村市に工場を持つ企業が、試験や実験を繰り返しながら形状や折り畳み方を見だしたと報道された。試行錯誤しながら、手段や構造を顧客に提案したのだ。

 このように、企業規模など関係なく、たとえ中小企業であっても技術と熱意さえあれば、「こちらの方が使いやすいです」「こうすれば安心できます」と、顧客に提案することが可能となる。実は、こうした提案が企業の「存在価値」を高める。「言われるままに技術を使う」だけにとどまるのではなく、顧客への「提案型」の取り組みが大切なのだ。

 今回は、部品メーカーに実践してほしい提案型の取り組みを紹介したい。その取り組みには3つの段階がある。

 第1段階は、「顧客から受け取った部品図を見て」提案するレベル。第2段階は、「加工する部品の顧客での使われ方を知って」提案するレベル。第3段階は、「部品メーカーにとどまらず、製品メーカーになって」提案するレベルだ。このうち、今回は第1と第2の段階を取り上げる(第3の段階については次回に譲る)。

(出所:日経クロステック)
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「すぐに製作にかかります」では物足りない

 まず、第1段階の「顧客から受け取った部品図を見て」提案するというのは、分かりやすく言うと、顧客から受け取る図面に、部品メーカーとして「気づきを返す」ということである。

 筆者には次のような経験がある。図面を描けたので、部品メーカーに声を掛けて打ち合わせを行った。図面を広げて「お願いしたいのはこのような部品です」と説明し、意見や指摘を聞こうと待った。ところが、部品メーカーから返ってきたのは、「早速持ち帰って製作にかかります。ありがとうございました」という言葉のみだった。

 設計を担当したものの、筆者には描いた図面に絶対の自信があったわけではない。効率良く加工できるのか、寸法公差は厳し過ぎないかなど、心配な点がいくつかあった。そこで、部品メーカーに要素技術のプロとしての意見を聞きたかったのだ。「この寸法の公差は狭過ぎて選別が必要」「プレスRはもう少し大きくしないと割れが生じやすい」「変形を防ぐにはリブが必要」といった「気づき」を返してもらおうと、打ち合わせを開いたのである。

 ここでしっかりとした指摘があれば、「この部品メーカーは頼りになる。次回もこの部品メーカーに声を掛けよう」と思っただろう。だが、ありがとうございましたと言われるだけだったので、「次回は別の部品メーカーに声を掛けよう」という気になってしまった。

 設計者が部品メーカーと打ち合わせるのは、要素技術のプロとしての意見を期待するからだ。従って、設計者との打ち合わせの場では、部品メーカーは受け取る図面に積極的に意見を言い、「気づき」を返すことを勧める。これが大切な「提案型の仕事」となる。

 もしかすると、顧客が作成した図面に部品メーカーが指摘できる余地があるのか? と疑問に感じる企業があるかもしれない。答えは、「しっかりある」だ。なぜなら、第1回や第64回のコラムでも説明した通り、「図面は全社で描く」ものだからだ。図面は、設計以外に生産技術や生産、品質、材料、調達、企画など関係する全ての部門の総知・総力を注ぎ込んで、ようやく「まっとうな図面」となる。従って、要素技術のプロである部品メーカーにも教えを請わねば、顧客はまっとうな図面を描けないのである。

 顧客から受け取る図面に対して要素技術のプロとして気づきを返せば、むやみに高い設備を導入したり、全数選別を行ったりするムダも省ける。もちろん、図面のレベルも上がる。

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