名古屋テレビ塔の全体改修工事を見学する機会があった。巨大な鉄骨とコンクリートで囲まれた工事現場だ。数人で作業していた。てっきりハイテク重機が唸(うな)る世界と思い込んでいたが、そうではなかった。現場の人が日々作業することで、次第にリニューアルされた塔が姿を現す。完成すれば多くの人が訪れる。まさに現場のプロのなせる業だ。

 今回はプロについて取り上げる。以前、NHKの「プロジェクトX」という番組があった。ある時、燃料電池車(FCV)の開発を取り上げていた。番組では開発に必要な思いをさまざまな場面と絡めて紹介していた。

「新しいことはしんどい、いばらの道だ。しかし、夢を忘れるな」
「さまざまな課題への答えは自分たちで見つける」
「こだわり、もっと良くしたい」
「突き抜ける思い。その思いをものに…」

 全く違和感のない言葉だ。さらに、その番組の最後に次のようなフレーズがあった。

「プロフェッショナルとは、信念を持ち突き進み夢を実現できる人たち。どんなに厳しい困難な条件でも結果を出す」

 素晴らしい言葉だ。このような思いを持って日々取り組みたいものである。

 もしかすると、プロフェッショナルという言葉を聞いて、自分には関係ないと思う人がいるかもしれない。プロフェッショナルとはその道を窮(きわ)めた人。私はまだまだ未熟であり、当てはまらないとの思いがあるのではないだろうか。

 私はそのようには考えない。企業で仕事をする人は多くの場合、組織で仕事を行う。初心者もいればベテランもいる。誰も入社してすぐにベテランの域にはなれない。しかし、初心者は初心者なりに役割を果たさなければならない。それぞれの経験や立場に相応(ふさわ)しい役割を担い、その役割の中で最大限結果を出す必要がある。

 組織の全員が持てる力を最大限発揮すれば、困難と思える課題でも結果が出るであろう。結果を出せれば、組織の全員が信念を持って突き進み、夢を実現するプロであったといえる。

 すなわち、プロフェッショナルとは「持てる力を最大限に発揮し続ける人」のことだ。こうした人が集まった組織は、どれほど困難な条件でも結果を出せるはずだ。従って、全員がプロフェッショナルとしての思いを持たなければならない。

課題を「やりきる力」

 このコラムの「設計力」を一言で表現すると、設計段階の仕事を「やりきる力」のことだ。設計段階の仕事は「先行開発」と「量産設計」から成り、それぞれにやりきらなければならない課題がある。先行開発でやりきるべき課題は「ダントツの目標設定」と「ネック技術のめど付け」だ。一方、量産設計の課題は「品質を“120%”確保するため(品質“120”%)の取り組み」だ。

 いずれの課題にも厳しい条件がある。例えば、ダントツの目標設定では、目標の妥当性に関する4要件[1]項目の妥当性、[2]目標値の妥当性、[3]システム動向との整合性、[4]成長タイミングとの整合性、をクリアしなければならない。品質“120”%の取り組みでは、工程内不良「ゼロ」、納入先不良「ゼロ」、市場クレーム「ゼロ」を目指す必要がある。

 こうした課題をやりきるには、関係者全員がそれぞれの立場で持てる力を最大限に発揮し続けなければならない。プロフェッショナルとして仕事をすることが全員に求められるのだ。そうなって初めて個人の設計力が高まり、組織の設計力も向上する。個人と組織の全循環的なスパイラルアップで職場の設計力が高まっていくのである。

 盆休みでリフレッシュし、新たな気持ちで職場に復帰した人も多いだろう。年の後半に向けたスタートに際し、これまでプロフェッショナルとして取り組んで来たか、それを目指していたか、今一度振り返ってみてはどうだろうか。

寺倉 修 氏(てらくら・おさむ)
ワールドテック 代表取締役
寺倉 修 氏(てらくら・おさむ) 実務経験に基づく真の「設計力」を定義し、実践的設計論を説く設計分野の第一人者。 1978年、日本電装(現 デンソー)入社。車載用センサーおよびアクチュエーターの開発、設計業務に従事。日本初のオートワイパー用レインセンサー開発、レクサス搭載を実現したほか、20種類以上の車載用センサー、アクチュエーターを開発、設計。 2005年、ワールドテック設立。製造業への開発・設計・生産などの技術を支援。 2010年、東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センター(MMRC)コンソーシアムで「モノづくりを支えるもう一つの力『設計力』」と題して講演。企業活力研究会「平成22年度 ものづくり競争力研究会」委員。 2014年、東京大学大学院経済学研究科 MMRCコンソーシアムで「『設計力』を支えるデザインレビュー」と題して講演。