ITエンジニアとしてどう生きていくべきか。本特集では、昨今よく言われているITエンジニアにまつわる常識について検証する。今回は「今後はデジタル化を担うエンジニアが求められる」という定説を取り上げる。基幹系システムに代表される、業務系システムの構築を手掛けてきたITエンジニアがキャリアを再考する参考にしてほしい。

 ここ数年、日本の大手SIerが続々と新しいスキルを持つITエンジニアを育成しようとしている。従来のように要件通りに設計・実装するエンジニアではなく、顧客と共にビジネス課題の解決策を考案する人材だ。背景にはデジタルトランスフォーメーション(DX)案件の増加がある。ここでのDX案件とは、先進技術を駆使して新サービスや新規事業を創出するプロジェクトのことだ。

 DX案件で有効と言われているのがデザイン思考。デザイン思考を用いてユーザーの課題を洗い出し、その解決策を導くスキルがエンジニアに求められるというのが近年の定説だ。この場合の開発プロセスはアジャイル型が望ましいとされる。

 大手SIerだけではない。国もITエンジニアのスキル転換を推奨している。経済産業省が2019年4月に公表した「IT人材需給に関する調査」では、ITエンジニアを「先端IT人材」と「従来型IT人材」とに分け、2030年には先端IT人材が最大73.7万人不足し、従来型IT人材が最大32.2万人余ると試算している。

 この人材需給ギャップについて報告書では「単にIT人材の数を増やすのではなく、生産性の向上や需要増が予想される先端技術に対応した人材の育成が重要である」としている。

基幹系エンジニアは強みを生かす

 従来型IT人材の象徴と言えば、基幹系システムの構築に携わるエンジニアだろう。しかし、職種転換を求められても「デザイン思考やアジャイル開発を手掛けたことがない」「AIやマイクロサービスなど新しい技術に疎い」と感じているエンジニアは多いはずだ。

基幹系ITエンジニアに関する定説と、それを再考した結論
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 では、将来を見据えて基幹系エンジニアはどう動くべきだろうか。心機一転、新しいスキルを身に付け、デジタル人材に転身するのは1つの道だ。しかしそれだけが基幹系エンジニアの目指すべき姿ではない。IT業界の識者に取材すると、新たな方向性が見えてきた。

 「基幹系エンジニアは、簡単になれるわけではない。実はエンジニア本人が思っているよりもずっと参入障壁が高い職種だ」。こう話すのはITベンダーであるシステムインテグレータの梅田弘之社長だ。

 梅田社長の言う参入障壁で、最も大きいのが会計や販売管理、物流といった業務知識だという。基幹系システムを構築する際に得た業務知識は簡単にキャッチアップできるものではない。自身のキャリアを再考するうえで、業務知識を生かす視点を加えてみてはどうだろう。

 一口にDX案件を担当すると言っても、基幹系と無縁な分野ばかりではない。業務知識を生かす視点を取り入れると、基幹系エンジニアがDX案件で活躍できる場面は広がるはずだ。

 例えば、業務現場のニーズに合わせて基幹系のデータを素早く提供する仕組みを構築する、といったことである。

 実際に全日本空輸は、旅客システムやコールセンターシステムなど、複数の基幹系システムに格納されている顧客情報をリアルタイムに取り出し、空港スタッフや客室乗務員などと共有するためのデータ基盤を構築した。これらは、基幹系システムのデータと業務知識の双方に明るい基幹系エンジニアがいたからこそ実現できた。このように、基幹系システムの隣接領域のデジタル化から手掛けるのがよいだろう。

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