今回は「ITインフラの運用は自動化が進む」という定説と、運用エンジニアのキャリアを再考する。

 ここ数年、ITインフラ技術が進歩し、それに伴って運用エンジニアの仕事が様変わりしている。最も大きなITインフラの変化はパブリッククラウドの普及だ。仮想環境が当たり前のように使われるようになり、ITインフラの設定や管理をソフトウエアで定義できるようになった。例えば、仮想マシン(VM)の起動、ネットワークの設定などである。

 設定作業をソフトで実行できるため、自動化できる運用作業が増えた。インフラストラクチャー・アズ・コード(Infrastructure as Code)と呼ばれるトレンドだ。以前のように、パスやコマンドを間違えないように注意しながら、手順書に沿って手作業で設定する仕事は大幅に減った。

 運用業務がソフトで実行できるようになると、アプリケーション開発者が運用作業の一部を担当できるようになる。開発と運用が一体となってサービスの開発と改善を進める「DevOps」や運用作業を極小化する「NoOps」といった動きが出始めた。

 もちろん、所属する組織の状況によっては「DevOpsやNoOpsなど、まだ遠い先の話だ」と考える向きもあるだろう。しかし、運用の自動化が今後さらに進み、運用担当者が不要になるのではないか、と不安になるエンジニアは多いはずだ。

運用エンジニアに関する定説と、それを再考した結論
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 今の仕事が減るならば、運用エンジニアはどうすべきか。目指すべき方向性の1つがSRE(Site Reliability Engineering:信頼性エンジニアリング)という考え方である。

広い視点を持つ運用担当者へ

 SREは米グーグル(Google)が提唱した概念。サービスの信頼性を高めるため、運用業務に工学的アプローチを持ち込むことである。

 2017年から社内にSREチームを設置したリクルートテクノロジーズでは、エンジニアの意識を変えた。リクルートテクノロジーズの河村聖悟ITインテグレーション本部SRE部シニアマネジャーは「以前は、運用担当者はインフラが安定稼働していればよいといった姿勢だった」と打ち明ける。しかし、事業としてはサービスが安定稼働しなければ意味がない。考え方を改め、「今ではアプリケーションの性能監視まで手掛ける」という。

 2016年に社内にSREチームを作ったサイボウズでも、運用エンジニアの仕事に対する考え方やスキルを変えた。運用作業の自動化を進めた結果、「チーム内のメンバーの作業時間のうち、手作業で運用作業をする割合が以前の30%程度まで減った。浮いたマンパワーをインフラの設計や開発、さらなる自動化のためのツール群の開発に充てるようにした」とサイボウズの石黒照朗運用本部サービス運用部SREは言う。

 注目すべきは、個別作業の自動化だけではなく、新サービスのリリースプロセスの自動化を進めていることだ。例えば、QA(品質保証)部門が新サービスを特定のサーバーにアップロードすると、単体テストを自動実行した後にリリース情報管理システムにその状況が自動的に記録される。運用部門はリリース情報管理システムを参照して、本番環境にデプロイする。以前はQA部門と運用部門が個別に情報伝達する必要があったがその手間を削減できた。

 こうしたプロセスの改善を進めたのがSREチームである。ここに運用エンジニアの新たな仕事のヒントがある。必要な視点は「個別作業ではなく運用プロセス全体に目を向ける」ことだ。

 個別の運用作業は自動化が進むとしても、運用プロセス全体を設計・改善する仕事は残る。SREを参考に、より広い視点に立った運用エンジニアを目指すのがよいだろう。

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