今回検証するのは「フルスタックエンジニアを目指すべき」という定説だ。数年前からネット企業を中心にフルスタックエンジニアが必要と言われてきた。

 フルスタックエンジニアの定義は厳密には決まっていないが、幅広い知識とスキルを備えているエンジニアを指す。ハードウエアからアプリケーションまでの知識を持っていることを指すこともあれば、サーバーサイドからフロントエンドまで手掛けられる人材を示す場合もある。サービスの企画から実装までを1人でやってのけるエンジニアのことを言うケースも散見される。

 まるでスーパーマンのような存在だが、ここ数年の技術の進展で決して不可能ではなくなった。特にパブリッククラウドが普及して以降、1人で複数の領域を担当するエンジニアは少なくない。

価値を高めやすいのは複数スキル

 では、スペシャリストはスキル不足なのだろうか。「今の職場では役割が限られている」「忙しくて新たなスキルを身に付けられない」と嘆くエンジニアもいるだろう。

フルスタックエンジニアに関する定説と、それを再考した結論
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 技術コンサルティングを手掛けるレクターの松岡剛志CEOは「スペシャリストの道を極めるか、フルスタックエンジニアを目指すかはその人次第。しかし、現状では新しい技術をいち早く取得し、柔軟に組み合わせられるエンジニアの価値が高まってきた」と言う。松岡社長はミクシィなど複数の企業でCTO(最高技術責任者)を務めた経歴を持つ。

 フルスタックエンジニアかスペシャリストか。再考する上で必要になるのは「自分の価値が高まるスキルは何か」という視点だ。

 楽天の板橋慈ECテクノロジー統括部ECデータアナリティクス部マーケティングオプティマイゼーション課シニアマネージャーはこう言う。「海外人材を含めると、単一のスキルが優秀なエンジニアは多くいる。ただし、1つの領域で評価されるようになるのは、かなりハードルが高い。複数の得意スキルを掛け合わせたほうが価値を高めやすい」。

 板橋シニアマネージャーは以前、エンジニアとして仕事する傍ら、簿記やマーケティングについて勉強した。こうした知識が役に立ち、現在は楽天市場のクーポン機能など複数のチームのプロダクトマネジャーを務めている。

 パーソル キャリアの転職サービス「doda」の大浦征也編集長も複数の得意スキルを持つことを推奨する。「ITエンジニアの枯渇感は過去最高レベル。しかし、より価値が高いのは複数の得意スキルを持つ人材だ」と言う。例えば、特定の技術スキルを持ちつつマネジメントスキルもあるエンジニアなどだ。

 「フルスタック」と言うと、習得すべき技術領域が広すぎるので、目指すのは現実的ではない。とはいえ、1つのスキルだけで価値を発揮できる時代は終わりつつあるようだ。今の環境に照らし合わせ、自分の価値を高められるスキルは何かを特定し、現状のスキルにもう1つの得意スキルを加えることから始めよう。

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