国税に関わる書類を電子データとして保存する方法などを定めた「電子帳簿保存法」。これに対応することで経理作業の効率化、ペーパーレス化、働き方改革の推進などにつなげる企業が増えている。2019年度からは書類のスキャン期限が緩和される見通しで、業務実態に即した法改正が進む。加えて、ツールの使い勝手も上がっている。電子帳簿保存法対応の最前線を追った。

 「慣れている従来のやり方の方が良い」という声もあったが、今は「昔のやり方に戻るなんて考えられない」という状態だ――。博報堂DYグループでコンテンツ制作やイベント事業などを手掛ける博報堂プロダクツの平田智取締役執行役員経営計画室室長はこう話す。

 同社では2018年4月から、約1800人の社員が電子帳簿保存法に対応した経費精算システムを使用している。欧州SAP傘下の米コンカー(Concur)が提供する経費精算SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)「Concur Expense」を採用。出先からスマートフォンアプリで領収書の撮影を含む経費精算の申請や承認を行えるようにして、業務効率を高めた。

 経費精算の作業で年間およそ2000時間・人の工数を削減し、他の業務に振り向けられるようにした。この業務効率化によって生み出される効果は年間4300万円相当になると見積もる。「投資額は1年もたたずに回収できる計算だ」と平田取締役は胸を張る。

博報堂プロダクツでのスマホによる経費精算のイメージ
(画面出所:博報堂プロダクツ)
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 電子帳簿保存法に対応するまでは、経費精算による業務効率の低下が問題になっていた。同社は顧客や発注先との打ち合わせで外出する社員が多い上に、イベント開催時などには数日にわたって出張するケースも少なくない。

 ところが会計システムは博報堂DYグループ共通のもので、オフィスに設置された1人1台の経理専用端末から経費精算の申請・承認を行う必要があった。リモートアクセスでは使用できず、経費精算のためにわざわざ出張先や客先から会社に戻っていたという。

 またコンテンツ制作やイベントといった事業内容の特性から経費精算の件数が多く、必要項目の入力や印刷した伝票への領収書貼り付けといった作業の効率化も経営課題の1つになっていた。

いつでもどこでも、スマホで経費精算

 そんな課題を抱えていた2017年に、働き方改革の一環としてスマートフォンを全社員に支給することになった。さらに電子帳簿保存法の改正によって同年からスマホで撮影した領収書が証憑(しょうひょう)として認められ、法律上スマホだけで経費精算をできるようになった。

 これらがきっかけとなり、同社は電子帳簿保存法に対応して経費精算システムの導入を決定。2017年6月に電子帳簿保存法対応のプロジェクトを立ち上げ、同年12月までにシステムを構築。翌18年4月に運用を始めた。

 新システムでは、経費精算の申請も承認もスマホアプリを使ってどこからでも行える。領収書はスマホで撮影することで、電子的な伝票に添付される。領収書の原本を事業管理部門に渡す必要があるが、次に出社したときで構わない。そのため経費精算のために会社に行く必要は無くなった。

 必要項目の入力も一部自動化し業務効率を高めた。電子帳簿保存法対応に合わせて導入した法人クレジットカードを使えば、日付や金額といった情報がカード会社からConcur Expenseに取り込まれてアプリ画面に表示されるので、申請者は入力する必要が無い。

 SuicaやPASMOなどの交通系ICカードについても、申請者が出社したときに専用読み取り機にかざせば、乗降駅や運賃などの履歴が自動転送される。

博報堂プロダクツの経費精算の申請・承認プロセス
※領収書などの証憑(しょうひょう)は事業管理部門が別途回収し保管する
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 金額の上限超過といった社内ルールに基づくチェックも一部はConcur Expenseで自動化。経費精算申請の差し戻しを減らすと同時に、承認者や経理部門の負担を軽減させた。

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