現状、導入の主流となっているのが自社に合ったモデルを開発する自社開発AIだ。自社開発AIはモデルの開発で終了ではなく、その後も様々な作業が必要になる。ただし、今後はテンプレートの活用によりモデル開発の工数は削減される見込みだ。

 AIの中核であるモデルを一から開発する自社開発AIは、学習用データの用意、アルゴリズムの選定、モデル開発などにおいて試行錯誤が欠かせない。半面、うまくいけば精度などを妥協せず、自社にピッタリ合ったAIを開発できるメリットがある。

 現状「大規模なAI導入プロジェクトでは、スクラッチでモデルを開発するのが一般的」(NTTデータの奈須善幸ビジネスソリューション事業本部AI&IoT事業部コンサルティング担当課長)な状況だ。では実際に自社開発AIを導入するために、気を付けるべき点は何だろうか。

 「モデルの選定に加え、選定したモデルを実装に向けて調整したことが大変だった」。こう振り返るのは、SMBCコンシューマーファインス濵島秀麻 与信企画部金融事業グループ長だ。

 「プロミス」を展開するSMBCコンシューマーファイナンスは、自社開発AIを活用し既存の「自動与信システム」の機能を2018年10月に強化した。自動与信システムは顧客の貸し倒れのリスクなどを加味して、限度額を算出するシステムだ。AI部分の開発には約1年かけた。

 SMBCコンシューマーファイナンスは、年齢や職業といった顧客情報、借入状況などの信用情報に加え、取引の記録に基づいて与信している。今回はこのうち、取引情報を利用する機能に自社開発AIを適用した。これまではAIを利用せずに開発したロジックを用いていた。

一度作ったモデルを、あえて簡素化して実装

 SMBCコンシューマーファイナンスはプロジェクト開始時に「AIを導入してもブラックボックスにならないこと」をポリシーの1つに定めた。その理由は説明責任があるためだ。「当局からの監査の際に、与信を算出するロジックの説明が求められる可能性があることを考慮した」と濵島グループ長は説明する。

 学習用の取引実績データはSMBCコンシューマーファイナンスが用意し、モデル開発はアビームコンサルティングが行った。

 アビームコンサルティングが開発したモデルの中から、SMBCコンシューマーファイナンスがモデルの選定作業を実施。「返済が難しい人を効率良く判別する」観点から精度を重視して選択した。「AIを使っていない場合のロジックと比較して、安定的に高い精度が出るかを評価した」と濵島グループ長は話す。

 ポイントはここで選んだモデルをそのまま自動与信システムに実装しなかったことだ。「選んだモデルを参考にして、式を簡素化した新たなモデルを実装用に開発した」(濵島グループ長)のだ。一般にモデルの開発を終えれば自社開発AIは完成に見える。しかしSMBCコンシューマーファイナンスは、モデル完成後も実装に向けた作業を続けた。

AIを使った与信システム開発の経緯
[画像のクリックで拡大表示]

 理由は大きく2つある。開発したモデルは非常に複雑で解釈性が低く、「ブラックボックスにしない」というポリシーを満たしていなかったためだ。もう1つはモデルのロジックが複雑で解釈性が低いと既存システムに組み込む際や、実装後の保守時に負担が重くなると判断したためだ。「既に動作しているシステムにモデルを組み込むため、本番環境に与える影響の調査なども必要になった」と濵島グループ長は説明する。

この先は日経 xTECH Active会員の登録が必要です

日経xTECH Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。