今回はいつもの連載をいったんお休みし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、BtoBマーケティングがどのように変わるのかを考えてみます。
この原稿を執筆している2020年4月中旬時点では、ゴールデンウイーク明けの5月6日まで緊急事態宣言が解除される予定となっています(編集部注:5月4日に、緊急事態宣言は5月末日まで延長された)。緊急事態宣言が解除された後の社会が、新型コロナウイルスの感染拡大前に戻るかどうかは筆者には想像が付きません。
それでも現在の状況から、BtoBマーケティングの前提は大きく変わることは推測できます。以下、筆者の予想を列挙しました。

ビジネスの現場は非オフィスのリモートワークに移る
緊急事態宣言と合わせて、政府は企業に従業員ができる限り出社しないように要請をしています。既に可能な企業からリモートワークを開始しています。
これにより、製品やサービスを購入してほしい顧客その人(以下、「顧客」と表記)が、オフィスに在席しているという前提が大きく変わっています。
- オフィスの直通電話に電話をかけても、顧客につながりにくくなります
- ダイレクトメールも顧客に届かなくなります
- 営業担当者は、顧客のオフィスを訪問して商談することが難しくなります
- リモート勤務している顧客のイヤホン/ヘッドホンの装着率が高まります
従来の、「電話やメールで顧客にアポイントを入れてから訪問する」という流れではなくなり、全く異なる営業プロセスとコンテンツが必要になるでしょう。
リモートワークでの視聴に適したコンテンツが必要になる
オフィスでの勤務と異なり、リモートワークではイヤホン/ヘッドホンの装着に抵抗がなくなります。筆者は1カ月半以上もリモートワークを続けていますが、Web会議に参加するため、マイク付きヘッドセットが手放せません。
同じような利用者が増えていると判断できれば、BtoBの動画コンテンツで音声の活用が進むと考えられます。これまでは、日本の手狭なオフィス環境を理由に自主規制していた表現が可能になるのです。
さらに進むと、動画を使った商品説明が受け入れられる可能性があります。将来は音声付き動画が1つのマーケティングチャネルとして認知されるかもしれません。
こうなると、従来のPV(ページビュー)数やUU(ユニークユーザー)数、データのDL(ダウンロード)数といった、顧客の情報アクセスを把握する指標だけでは十分といえなくなる可能性があります。動画でいえば、視聴完了率(全視聴者のうち、動画を最後まで視聴した利用者割合)などの、顧客のエンゲージメント(興味・関心を示す具体的な行動)を把握する指標の重要度が増すと思われます。