日本企業はデータが価値を生む経済のビジネスモデルで負けている。ハードウエア中心の考え方を引きずったまま、標準化のプロセス運用がソフトウエア中心に置き換わった現実に対応できていないからだ。

 現在、データ仕様の標準化やデータを処理するソフトウエア仕様の標準化は多くがアジャイルなスタイルで行われる。日本では標準とアジャイルという2つの単語に真逆のイメージを持つ方が多いかもしれないが、それはハードウエア中心の考え方だ。

 今はソフトウエア中心の標準化プロセスが徐々に広がりを見せている。それが日本企業がデータ経済でイニシアチブを取れない要因の1つであると私は考えている。なぜ日本企業がデータ経済で負けてしまうのか、背景を説明しよう。

「いつ準拠すればよいのか」と聞く日本企業の末路

 ハードからソフトへ、標準化プロセスの進め方が劇的に変わるパラダイムシフトが始まったのはインターネットの開発であった。

 「RFC」(Request For Comments)という名称で確定仕様が呼称されるIETF(Internet Engineering Task Force)はインターネットで利用される技術の標準化を推進する組織だ。IETFは「緩やかな合意形成と実装(Rough consensus, running code)」というスローガンを掲げている。

 このスローガンは仕様の細部の記述を詰めていくのに時間をかけるよりも、機能する実装を迅速に作り出し、「相互接続性試験(Interop)」によって準拠する実装事例を広めるというIETFのやり方を象徴するものである。

 相互接続性試験とは通信機能のある機器同士が適切に接続できるか確認するものだ。日本でも毎年開催される展示会である「Interop(インターロップ)」はインターネットの標準仕様策定における重要なイベントなのだ。

 ハードウエアは仕様を基に一度実装すると改良にコストがかかってしまう。そのため標準化作業が完了し、仕様の確定を待って実装にとりかかるのが合理的だ。一方ソフトウエアの置き換え、つまりアップデートはカジュアルに実施できる。そのロジックで回っている標準化プロセスでは、仕様案が安定するのを待って実装する必要などない。相互接続性試験もコードをサーバーにアップロードして動かしてみればあっさりできてしまう。

 ウェブの標準化団体であるW3Cでは標準化プロセスの早期段階で独立した複数の相互可用性のある実装事例が存在することを求められる。このルールは実装主義と呼ばれている。常に実装が合意形成を先行するという運営方針を採用している。

 つまり合意形成が完了し、仕様が確定してから実装する、というハードウエアのパラダイムに基づいた戦略で標準化に関与しても、ほとんど影響力を発揮できないわけである。

図●従来の標準仕様策定プロセスと、W3Cなどの「実装主義」に基づく仕様策定プロセスの違い
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 さらにW3Cは提案内容から知的財産による収入を主張できないロイヤルティーフリーというルールを採用する。このルールに基づき、提案された仕様は草案の段階から公開される。またW3Cの外部に対しても、提案仕様の実装が呼びかけられる。実装事例の数はその仕様に対する支持の反映である。

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