とりあえず現職を辞めて、アルバイトでもしながら再就職先を探す――。前回、早期退職者によくあるこんなケースを取り上げました。今回は、具体的な事例を紹介しましょう。長年勤めていた電機メーカーを早期退職したタマさん(仮名、53歳)です。

 タマさんの場合、割り増し分も合わせると退職金は4000万円ほどありました。これだけあれば半年ほどゆっくりして転職活動をすればよいだろうと、早期退職を決意しました。

 タマさんが住むのは人口25万人ほどの地方都市です。自宅も購入し、一時転勤はあったものの、戻ってからはこの地に腰を落ち着けています。家族がいますし近所付き合いもほどよくあり、退職してもそれほどさみしくはありません。

 しかしこれまで忙しく働いていたタマさん。半年ほどゆっくりしようと思っていたものの、何もせず一日中家にいる日が続くと苦痛を覚えるようになりました。働いていないと落ち着かない、どこかに出社して同僚とコミュニケーションを取りたい。そんな思いから、再就職先が決まるまでの間、つなぎでアルバイトをしようと考えました。

 交通費や通勤時間などの無駄が出ないよう、自宅から自転車で5分のところにあるコンビニエンスストアのアルバイト募集に応募しました。コンビニのアルバイト枠は学生の間でも取り合いと聞いていたのですが、コロナ禍で授業がオンラインになり、タマさんが住む街では一人暮らしの学生が減少。その影響で応募が減ったこともあってか、タマさんは運良く採用されました。

 生活のリズムを保つため、勤務時間帯は6~9時と18~21時という朝夕の2枠を希望。これを週3日担当することになりました。

元同僚が放ったひと言に衝撃

 この2枠はいずれも、会社勤めのときの出勤と退勤の時間帯です。タマさんには全く苦になりませんでした。むしろそれ以外の時間が自由に使えるために転職活動もしやすく、タマさんにとってはメリハリの付いた良い働き方でした。

 しかし少したつと、気になることが出てきました。まずは前職の知り合いの存在です。人口25万人程度の地方都市では、休日に街中に出れば同僚や取引先の社員に会うものです。タマさんが働くコンビニにも、驚くほど多くの知り合いが買い物に来ました。

 最初は久しぶりの出会いが新鮮でしたが、1カ月もすればそれも薄れます。レジ打ちや品出しに忙しくしている最中に「どう、退職生活は?」「タマさんが辞めたあともいろいろ面倒なことが多くてさ」など、無駄話をしてきます。客として来店した元同僚を邪険に扱うこともできず、ストレスを感じるようになりました。

 そんなある日、おにぎりを買いに来た元同僚が無邪気に放ったひと言にタマさんは衝撃を受けました。「やはり仕事見つからないの?」と言われたのです。

 タマさん自身は、再就職までのつなぎのつもりでアルバイトをしていました。生活にメリハリも付き、この働き方に満足していました。しかし元同僚からは「やはり早期退職しても50代は正社員の枠がなく、やむなくアルバイトしている」と見られていた――。人目を気にするタマさんは、このひと言で落ち込んでしまいました。

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