新型コロナウイルス感染症が深刻な事態となって以来、新型コロナウイルスに関する情報はテレビ、ラジオ、そしてネットを駆け巡っている。もちろん、SNS(交流サイト)もしかりだ。
災害が起きると人々は不安になり、情報やつながりを求めてSNSに集う。大切な知り合いを助けたいと思い、「大手メディアには報道されていない情報」「友達の友達から伝わってきた重要な情報」を一刻も早く発信する。しかし、そのなかには信ぴょう性のないデマもある。
2011年3月の東日本大震災のときは「製油所が爆発したので有害物質が雨に混ざる」などのチェーンメールが横行した。2018年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震の際には「携帯電話の電波塔に電気が行かないため携帯電話が止まる」といったデマが流れ、関係者は対応に追われた。
新型コロナウイルスに関しても「新型コロナウイルスはセ氏26~27度の温度で死滅するのでお湯を飲むとよい」「4月1日からロックダウン(都市封鎖)になる」「トイレットペーパーやティッシュペーパーの供給が途絶える」といったデマが流れた。
トイレットペーパーやティッシュペーパーを巡っては、デマをきっかけに消費者が買い占めに走るパニックが起こり、長らく品薄状態が続いた。また、内閣官房の菅義偉(よしひで)長官による、4月1日からのロックダウンを否定する会見をテレビで目にした人もいるだろう。こうしたデマは国内に限ったことではなく、海外でも流布されている。お湯のデマは中国から伝わってきたという説もある。
2020年4月半ば時点では、日赤医療センターのドクターから送られてきたとする「現場ではすでに医療崩壊のシナリオも想定され始めています」とのメッセージが拡散されている。このメッセージもデマである可能性が高い。
善意で発信された情報は信じてしまいやすい
筆者が知人にも頼んで拡散されているメッセージを集めたところ、内容が少しずつ違っていた。まず、情報源とされる人物が「日本赤十字社医療センターの医師」「慶応義塾大学病院の関係者」「○○大学の医学教授」などのパターンがあった。内容は似たり寄ったりで、「現場は深刻で病院が満床になっている」などと、健康チェックの方法や予防策などが書かれている。長文のメッセージの中に実在する大学教授のコメントが入っていたり、同じ文章に複数の情報元が存在したりするなど、シェアされていくうちに文章が改変されていった経緯がうかがえる。
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