日清食品ホールディングスは基幹系システムをクラウドに移行した。2度にわたるリハーサルが功を奏し、ノートラブルで切り抜けた。システム性能を柔軟に変えられるクラウドの特性が、移行でも役立った。

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 日清食品ホールディングス(HD)は2019年9月17日、基幹系システムのクラウド移行を完了した。富士通のデータセンターで稼働させていた旧システムを米マイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」に移した。

 アプリケーションは欧州SAP製のERP(統合基幹業務システム)である「SAP ERP 6.0」。財務/管理会計、販売管理、生産計画、在庫/購買管理の機能を持つ。日清食品HDの喜多羅滋夫執行役員CIO(最高情報責任者)グループ情報責任者は「OSやデータベースソフトのサポート切れを回避しつつ、将来に向けてITインフラの拡張性を確保できた」と語る。

 移行当日の作業は「驚くほどスムーズに終わった」(喜多羅CIO)。2度にわたる移行リハーサルなど綿密な準備がその背景にあった。

日清食品の主力製品
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発端はMS製品の保守切れ

 クラウド移行の検討が始まったのは2017年の秋ごろ。きっかけはマイクロソフト製品のサポート切れだった。旧システムのOSはWindows Server 2008、データベース(DB)はSQL Server 2008だった。前者は2020年に、後者は2019年にサポート切れを迎える。加えて当時の想定ではアプリケーションのSAP ERP 6.0についても、2025年にサポートが終わる予定だった(2020年2月に欧州SAPはERP6.0を2027年までサポートすると発表した)。

 もっとも旧システムといっても、稼働を開始したのは2015年のことだった。つまり刷新の検討を始めた2017年秋の時点で、稼働開始から2年しかたっていなかった。

 稼働開始からわずか2年でOSやDBのサポート切れが迫っていたのには理由がある。旧システムは5年以上の歳月を費やして構築したものだったからだ。構築に時間がかかったのは、メインフレームの撤廃を伴う難プロジェクトだったため。40年以上使っていた富士通製メインフレームのCOBOLアプリケーションを精査し、不要な機能を削除しつつ、必要なものをSAP ERPに置き換えていった。サーバーなどを購入したのは開発プロジェクト中の2013年だった。このため稼働後2年なのに更新時期が迫っていたのである。

 OSとDB、アプリケーションのサポート切れに加えて、旧システムには幾つかの課題があった。1つは災害対策(DR)だ。東日本のデータセンターで稼働していた旧システムは、DR用のシステムを西日本に用意していた。災害発生時に西日本のシステムに切り替えるには48時間かかる設計だった。これを24時間以内に切り替えられるようにしたかった。

 この他、ERPからデータを収集するBI(ビジネスインテリジェンス)システムにも問題があった。ハードウエア性能が足りず、夜間バッチ処理が始業までに終わらなかったり、数分から数十分間のシステムダウンがしばしば起こったりしていた。

図 クラウド移行の動機とシステム構成の変化
サポート切れを回避
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