「最近よく耳にするDXとこれまでのシステム構築と何が違うのか?」と質問されることがよくある。その答えは案外難しい。そもそも最初にDXという概念を提唱したエリック・ストルターマンのDXの定義はシンプルで抽象的である。それは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものだ。

 抽象的でシンプルなるがゆえに、解釈はいかようにもできる。ストルターマンのDXを素直に読めば「ITが浸透すれば結果として、人々の生活は良くなる」ということだが、今、日本ではやっているDXは「企業はITをこれまで以上に用いて、経営や業務、仕事のやり方を変革せよ」といったニュアンスが強い。

 コロナ禍の影響もあり、日本だけでなく世界中で企業のビジネスモデルや働き方が変わらざるを得ない時代にあって、確かにDXという言葉は響きが良いし、それは企業が生き残り、さらに発展していくためには必要なことだろう。だが、冒頭の「DXとこれまでのITシステムと何が違うの?」ということに対して曖昧なまま、ブームだからといって飛びつけば、中途半端になり無駄な投資に終わるだろう。

 DX=デジタル・トランスフォーメーションのDとX。大事なのはXだ。D=デジタル=ITは手段であり、X=トランスフォーメーション=変革が目的であることは言わずもがなだが、「変革」は簡単にできるものではない。個人では安定を求め変化を嫌う人もいれば、その逆に冒険好きで常に変化を求める人もいるが、それが会社や役所などの「組織」になるとほとんどの組織は変化を嫌い、現状維持が基本となる。

 変化の兆しがあればそれを排除する方向に力学が働く。同調圧力が強い日本の組織では、組織が自律的に変化していくことはまれだ。特に役所や重厚長大産業など古くからの強固な組織によって成り立ち、人事評価が加点主義ではなく減点主義の組織ではなおさらである。

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