先日、ある会社の社長と面談したときのことだ。この会社の現行基幹システムは導入からすでに10年以上が経過し、再構築のタイミングを迎えていた。社長の次期システムに期待する思いをお聞きするなかで、インフラの話題になったときのことである。

 現行システムはオンプレミス環境にあるサーバーで稼働しており、サーバー管理などの負荷が高いことを事前に聞いていたので、「次期システムではクラウドの利用はどうか」と尋ねたところ、「クラウドは使いたくない」と明言された。使いたくない理由を質問すると、以下のような答えが返ってきた。

・重要なデータを社外に置くのはリスクが高すぎる
・クラウドのトラブルをかなり頻繁にニュースなどで見るので、信頼できない
・クラウドにトラブルが発生した場合、自分たちで何もできないのは不安である
・日本のリージョンに置けばよいと言われるが、本当にそれが日本に置かれているかどうか分からない

 この社長の懸念に対して、「いや、そうではありません」「それは大丈夫です」と反論や説明を行うことはそう難しいことではない。クラウドにはメリットもデメリットもあるが、現在はメリットのほうがデメリットを大きく上回っていると多くの企業や人が考えているので、クラウドが隆盛を誇っているのは確かだ。

 筆者もコンサルティングを行う際に、クラウドの利用というのは有力な選択肢として真っ先に頭に浮かぶことが多い。しかし、この社長と話していてふと感じたのは、反論や説明によってしぶしぶ納得させることはできるかもしれないが、「なるほど、そうか、素晴らしい」と共感にまで持っていくのはかなり難しいのではないかということだ。その場で論争すべきではないと考え、この話題は後日に先送りした。

 その理由は相手の社長にあるのではない。

 筆者がもし説明や反論を行うとすれば、そのベースとなる情報の主たるものはインターネット上のものであったり、セミナーなどで聞いた情報であったり、ベンダーとの打ち合わせの場で聞いた情報であったりがほとんどである。インターネットの情報もAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureの現地発の英文アナウンスではなく、日本語の2次、3次情報から仕入れる場合がほとんどである。

 また、金融機関を含む大企業がどんどん利用を加速しており、「みんなが使っているから大丈夫」と安易に考えていることも否めない。一歩引いて冷静に考えると、筆者を含めて、極端な表現を用いれば「雰囲気」でクラウド推しをしていないだろうか。それでは疑念を持つ人から見れば根拠薄弱に映ってしまうはずだ。

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