550人を超えるCTO(最高技術責任者)が集う団体「日本CTO協会」。代表理事を務める松岡剛志氏はCTO同士のネットワーク作りを通じて、日本の企業経営をテクノロジーで支援したいと語る。行政デジタル化の議論が加速する中、デジタル庁に期待をかける。協会として政策提言し、必要とあらば協力を惜しまないと強調。「技術者としての修羅場が好き」と公言する松岡氏が語る、日本に必要なCTO像とは。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、玉置 亮太=日経クロステック/日経コンピュータ)

松岡 剛志(まつおか・たけし)氏
ヤフーの新卒第1期生エンジニアとして複数プロダクトやセキュリティーに関わる。その後、ミクシィで複数のプロダクトを作成した後、取締役CTO兼人事部長に就任。B to Bスタートアップ1社を経て、CTO経験者4人と共同でレクターを設立し、代表取締役に就任。2019年9月、一般社団法人日本CTO協会を設立し代表理事に就任(現職)。(写真:的野 弘路、以下同)
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CTOという役職を知ったのはいつごろのことですか。

 ミクシィに所属していた2013年ごろに、朝倉(祐介・元社長)といっしょにターンアラウンド(事業の方向転換や企業再生)を仕掛けようと動き出した際、CTOをやりたまえという話になったのがきっかけです。前任者と交代で、かなり急な話でした。

 急いで本を読んでCTOとは何かを勉強しました。当時は英語の本が2冊くらいしかなかったので、読みましたよ。

 でも、分からん!と。当時は製造業でものづくりに関わる技術職といった理解が大半で、ソフトウエアを中核とする企業のCTOを論じた文や研究はほとんどありませんでした。

 分からないので、では他人から教えてもらおうと考えて、CTO会を始めました。先輩方にまず教わろうと。

ミクシィでは具体的にどんな仕事に取り組んだのですか。

 会社や個人ごとにCTOへのイメージは異なるでしょう。ミクシィの場合は複数の事業を持っていましたから、技術ポートフォリオの検討や必要な人材の種類や規模、どう確保し育てていくか、といったことを検討しました。

組織の段階ごとにCTO像は変わる

 さらにどのフェーズでもそうなんですけれども、CTOは自社の技術的な広告塔でもあり、また取締役CTOの場合は経営者の中で一番技術が分かっている人であるべきです。その職責を果たすなど、仕事はかなり多岐にわたっていたと思います。

CTOにふさわしい人材像をどう考えますか。

 事業をゼロから作り出すスタートアップの場合は、極端に言えばまずはCTOと名乗ればいいと思うんですよ。環境や立場が人を育てる面がありますから。総勢5人の会社のCTOになったとなれば、技術に関する責任を全て負って頑張るしかないので。会社としてのステージが上がってくるごとにどんどん問題が難しくなっていって、それを解き続けてCTOとして成長する人もいるでしょう。

 オタクの天才ハッカーが大事なフェーズや組織で結果を出すことが会社の技術課題というフェーズ、やがて複数の事業やカンパニーを持ち始めて事業ポートフォリオが大事なフェーズと、企業の成長に応じて最適なCTOの姿が変わると思っています。会社が技術に求める要件が変わるので。

 CTOの人材像についても、いくつかのパターンがあると思います。同一の人物が成長していくパターンもあれば、フェーズごとに違う人物をCTOに据えるケースなど。ではふさわしい人材はどこにいるんですかというと、CTOという名前が付いてないだけで社内を見渡せば人材はいるものです。チームマネジメントが得意な人とか、技術ポートフォリオの検討にたけている人はほかの職種でも絶対いるはずなので。これらのジョブディスクリプションは会社ごとに異なると思いますから各社が言語化しなければいけませんが、言語化した後に探せばいるし、任せてみたらいいと思います。

一連の問題意識を土台に日本CTO協会を設立しました。改めて設立の狙いは。

 CTO同士に社外のネットワーク作りやノウハウ交流の場を設けるためです。基本的に社内で孤独なんですよ、CTOって。最初は勉強会をずっと開催していたのですが、途中から私が学ぶ場所から、ベテランから若手など参加者同士がノウハウを交換する場に変わっていったんです。とても価値が高かったと思いますね。気が付いたらCTO会の参加者が400人ぐらいに増えていたんですよね。そこまで増えると何か違うことができるのではないかという思いがわいてきまして、協会という着想に至りました。

 いま理事を務めている人たちに相談して、協会としてのミッションを考えました。結果、「日本の企業経営に先端のテクノロジーを」というミッションを掲げることに決めて設立に至りました。

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