ポンプの老舗であり、半導体製造装置メーカーとしても成長している荏原製作所。「2030年のありたい姿」に向けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)や新規事業の創出、ダイバーシティーの推進などを加速させている。同社が力を注ぐ「攻めのDX」の中身と成果。「守りのDX」の目玉施策の進捗状況。外部からCIO(最高情報責任者)を招いてよかったこと。リーダーに求める条件――。浅見正男社長が明かす変革プロジェクトの現状と手応えとは。

(聞き手は戸川 尚樹=日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 所長)

浅見 正男(あさみ・まさお)氏
浅見 正男(あさみ・まさお)氏
1986年横浜国立大学工学部を卒業後、同年荏原製作所に入社。第二機械事業部(現カスタムポンプ)技術部に配属される。1991年、技術サポート担当として米国サンノゼに駐在。2006年に精密・装置事業部マーケティング室長、2011年に執行役員 精密・営業統括部長、2014年に常務執行役員などを歴任。2015年執行役常務、2016年精密・電子事業カンパニープレジデントを経て、2019年3月より取締役代表執行役社長(現職)。1960年生まれ。東京都出身。(写真:村田 和聡)
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現在の経営状況については、どう見ていますか。

 まずまず、といったところでしょうか。直近である2021年12月期の業績は、増収増益(売上高6032億円、営業利益613億円)でした。その理由は、半導体市場の設備投資が好調を維持していることが挙げられます。さらにカスタムポンプやコンプレッサー、タービンを手掛ける風水力事業で、コスト削減や選別受注などの工夫を凝らし、収益性を改善させました。

 足元の業績や株価は大切ですが、社会インフラや産業インフラを支えている会社として、長期的な視点で持続的に成長することのほうをより重視しています。具体的には「2030年のありたい姿」を示した長期ビジョン「E-Vision2030」に沿って、社会・環境価値と経済価値の両方を向上させ、企業価値を高めていかなければなりません。

 社会・環境価値については、「二酸化炭素(CO2)約1億トン相当の温室効果ガスを削減する」ことや、「世界で6億人に水を届ける」ことなどを目標として掲げました。一方、経済価値に関する数値目標は、「ROIC(投下資本利益率)10.0%以上」と「売上高1兆円規模」という内容です。

「2030年のありたい姿」と現状のギャップを埋めるために力を入れていることは何ですか。

 「国籍・性別を問わず、自ら考え、スピード感をもって、積極的に新たな挑戦をし、目に見える成果を出す」。これが、荏原グループが目指す「2030年のありたい姿」です。これに対して現状は、「日本中心」「スピード感」「変化への抵抗」「成果・成長への意欲」「目的意識」という点で課題を抱えています。

 こうした課題を解決して、ありたい姿になるためにやるべきことは、1つではありません。デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や、新事業の開拓・創出に向けた取り組みの強化、ダイバーシティーの推進、組織風土改革、働き方改革、人事制度の見直しなど、様々なテーマに取り組んでいます。

「攻めのDX」の成果、xR技術を活用したCAVEシステム

DXについては、「攻め」と「守り」に区分して取り組んでいます。その狙いを教えてください。

 DXだけに焦点を当てても、具体的な施策は多岐に渡ります。誰もが理解して実践しやすいよう、取り組みの内容を整理・分類し、攻めと守りの両面からDXを進めています。

 「攻めのDX」とは、データやデジタル技術を駆使し、製品やサービス、ビジネスモデルをグローバルに変革することです。それを支えるERP(統合基幹業務システム)やタレントマネジメントなどの情報インフラを整備するのが「守りのDX」。このように定義しました。

 さらに攻めのDXについては、「既存ビジネスの変革」と「新規ビジネスの創出」に区分して施策を進めています。前者には、「IoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用した生産自動化の推進」や「3Dデジタル製造の活用」などの施策があります。

 後者としては「xR技術の応用」や「AI(人工知能)画像解析の応用」などに取り組んでいます。例えば、xR技術の応用については「CAVEシステム」という成果物が既にあります。

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