ヤフー社長から東京都副知事に転身して2年半、都政のデジタル変革に注力する宮坂学氏。デジタルサービス局を立ち上げ、都のIT環境を整備し、人材の採用や育成にも力を注ぐ。民間企業と比べて行政のデジタル化が進まなかった理由は「人員と予算」と喝破する。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、外薗 祐理子=日経クロステック/日経コンピュータ)

宮坂 学 氏
宮坂 学 氏
1967年生まれ。1997年、ヤフー(現・Zホールディングス)入社。2012年、社長に就任。18年に退任。東京都参与を経て19年9月より現職。(写真:村田 和聡)
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東京都副知事に就任して約2年半が経ちました。これまでの成果と課題は。

 一番やりたいと思っていたのは「船をつくる」ことでした。(2021年4月に発足した)デジタルサービス局が予定よりも早くでき、都庁プロパーも民間出身者も入ってきているのはよかったと思います。

 デジタルサービス局は今200人ぐらいの組織で、このうち約40人がICTの専門人材です。民間出身の「デジタルシフト推進担当課長」という任期付きの高度ICT専門人材が約20人、任期なしの「ICT職」が約20人います。

 ただ先ほどの船の例えで言えば、操船には苦労していますね。やったことがないことなので、苦労するのも織り込み済みではあるのですが。

どんな点に苦労していますか。

 民間出身者にとっての行政、行政出身者にとっての民間は、互いに未知な世界です。異文化の人たちが一緒になったようなものです。民間企業に例えれば、難度の高いPMI(買収後の統合作業)に挑戦している感じです。

 同じような苦労をしているデジタル庁や、他の自治体にも話を聞いています。それからメーカーや小売業の方々とも話します。私の前職はそもそもデジタル企業だったので、デジタル化で苦労するのはこういう点なのかと今、痛感しています。

DX推進組織に当たるデジタルサービス局を1年ほど運営してきて、うまくいった点、難しかった点は。

 都のシステムに対するデジタルサービス局の関わり方を大きく3つに分けて考えています。1つめはデジタルサービス局がオーナーとしてつくる自主型です。2つめは各局がオーナーになりますが、難度が高いという理由でデジタルサービス局も一緒に開発する伴走型。3つめは各局が自らシステムを開発するタイプで、我々はガイドラインやツールを整備して支援します。

 今までの案件は2つめの伴走型が多かったです。新型コロナウイルス対策Webサイトや、東京都独自のワクチン接種証明アプリ「TOKYOワクション」も伴走型です。改善すべき点は自主型が少ないことですね。受託開発しかやらない組織内SEのようになってしまいます。

 ただ、伴走しているうちに庁内の別々の部署で似たような取り組みをしていることも分かってきました。来年以降はデジタルサービス局でシステム開発に利用できる共通基盤をつくりたいと考え、今から準備を進めています。共通基盤がないとシステム開発の生産性も上がりません。

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