農機や水道設備のイメージが強かったクボタ。メーカーからの脱却を率いる北尾裕一社長は地方の課題解決に資するプラットフォームの提供を目指すと宣言。事業モデルから研究開発までデジタルの力で変革するとの決意を聞いた。
(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、金子 寛人=日経クロステック/日経コンピュータ)
2021年3月に発表した長期ビジョンと中期経営計画で、2030年に目指す企業の姿から逆算するバックキャストの手法でデジタル戦略を打ち出しました。農機メーカーのクボタがデジタルを前面に押し出す狙いは。
2020年に創業130周年を迎えたのを機に、10年後のクボタの姿を示した「GMB2030」という長期ビジョンを作り、最初の5年をカバーする中計を定めました。コロナ禍で役員の海外出張がなくなったこともあり、社内のプロジェクトチームや役員同士で議論を重ねました。その中で特に議論が白熱したのが、クボタの原点についてです。
創業からの130年を振り返って原点を見つめると、創業者の久保田権四郎の言葉に「技術的に優れているだけでなく、社会の皆様に役立つものでなければならない」「国の発展に役立つ商品は、全知全霊を込めて作り出さねば生まれない」といったものがあります。将来にわたり「社会の皆様に役立つもの」とは何か。10~20年を見据えた社会の変化、つまりメガトレンドから分析を始めました。例えばカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)をはじめ、自然災害や地球温暖化などの環境問題の重要性が増しています。議論の末、将来の方向性として作ったのが「GMB2030」です。