2020年春以降、新型コロナウイルス対策として広まったテレワークの普及促進を手掛ける日本テレワーク協会。ここ1年ほどは政府によるテレワーク助成金の交付や、導入相談などに力を入れてきた。栗原博会長はテレワークを「企業を洗濯する手段」「DXの入り口」と位置付けて、より一層の普及を目指す。コロナ後もテレワークは当たり前の働き方として定着するのか。見通しや効果的な導入の処方箋を聞いた。
(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、西村 崇=日経クロステック/日経コンピュータ)
テレワークの普及・啓発を進める団体のトップとしてここ1年、テレワークの状況をどう見ていますか。
日本テレワーク協会は1991年、日本サテライトオフィス協会として設立し、2000年に現在の名称に変更しています。ここ1年は、設立以降の30年の歩みに匹敵するほどの変化が起きた印象です。
数年ほど前までテレワークは、育児や出産、介護などと仕事を両立する社員に向けた「特別」な働き方でした。これがコロナ下で一変。企業などの中でもテレワークが市民権を得たのが、この1年だと思います。
当協会はテレワークが当たり前の働き方になるように、普及・啓発や調査研究に取り組んできました。テレワークに取り組みたい企業から相談を受け付けるのも我々の仕事です。
中央省庁とも連携してきました。テレワーク推進の全国キャンペーン「テレワーク・デイズ」が代表例です。政府が2020年度にテレワーク関連の大規模な助成金制度を導入した際には、助成金の交付などを手伝いました。
1回目の宣言後に企業が二極化
ここ1年あまりでかつてないほど多くの企業がテレワークを経験しました。活動を通じて企業の変化をどう感じていますか。
テレワーク制度を持つ企業は以前からありましたが、実際に利用する社員はごく一部に限られていました。それが2020年春、コロナ下で多くの企業が大がかりにテレワークをせざるを得なくなりました。
ただ、こうした状況は長くは続きませんでした。2020年5月に1回目の緊急事態宣言が明けて以降、「生産性が上がらない」などの理由でテレワークをやめる企業と、「紙文書で仕事をしていた。今回を機にデジタル化を進めていこう」とテレワークを続ける企業に分かれたのです。2021年1月に発令された2回目の緊急事態宣言で、二極化がより鮮明になりました。