ITシステムの開発や保守を、特定のITベンダーに依存せざるを得ない状況を意味する「ベンダーロックイン」。官公庁や大企業などの大規模かつレガシーなシステムに目立つ傾向であるが、公正取引委員会が本格的にメスを入れ始めた。

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 ところでこの問題、一部メディアや世論では「ベンダーが悪い」ような論調が繰り広げられているが、筆者は「ちょっと待て」と言いたい。

 断言する。ベンダーロックインは発注者側の自業自得である。むしろベンダーは被害者であるとさえいえる。

「ガラパゴス」なお作法や独特の奇習の数々

 ベンダーロックインが常態化する発注者の業務やITシステムは「ガラパゴス」である。専門用語のオンパレードはよいとしても、独特な言い回し、ドキュメントの作成の仕方、中間成果物や納品物の形式、報告方法など至る所にクセがある。例えば次のようなものだ。

  • ・納品物をCD-Rに焼いて提出させる
  • ・報告書を所定の印刷機器で印刷させ、既定のルールで製本させる

 このようなクセを理解し、合わせるのにベンダーは相当のイニシャルコストを必要とする。また、間接業務も少なくない。ベンダーがそのための環境を用意したり、手続きをしたりするのも一苦労だ。

 もちろん、これらのガラパゴスなお作法や独特なルールが一概に悪いとは言えない。合理性のあるものもあろう。ただ、中にはなくせるもの、アップデートできるものもあるはずだ。

 しかしながら「ルールだから」の一点張りで、変えようとも関係各部門と調整しようともしない。こうしてある意味で浮世離れした(一般的な企業とはかけ離れた)奇習が温存される。そして、ガラパゴスな要求に合わせるには、ベンダーは環境や人員を確保したり、教育をしたりとそれなりの時間とコストをかけ続けなければならない。その余力があるベンダーはおのずと限られてしまうのである。

 利用部門の独自の要求や追加要求の嵐も悩ましい。発注元の情報システム組織がきちんと調整し、断るものは断ってくれればまだしも、そうでない場合は目も当てられない。利用部門の要求を右から左へ流すだけ。ベンダーに丸投げされる。

 あるいは利用部門と波風を立てたくない(またはリスクを取りたくない)情報システム組織は、「現行通り」の要件でものごとを進めようとする。ところが、これまた厄介なのである。「現行通りでお願い」とベンダーに丸投げ。その現行が分かっているのは、情報システム組織の担当者ではない。ベンダーである。ガラパゴスなお作法や要件の上塗り、かつベンダーに丸投げしてきたのだから当然である。

 こうして「勝手知ったる」「事情通な」「常連」のベンダーしか対応できない鉄壁(かつ謎な地下通路などが張り巡らされた)のとりでが年月をかけて築かれるのである。

ベンダーロックインの問題地図
ベンダーロックインの問題地図
(出所:あまねキャリア)
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