AI開発で人間の関与が減るほど、優秀なAIが出来上がる――。これは歴史に基づく経験則であり、今後も同じことが続くだろう。

 今後はAI開発のあらゆる領域で、人間の関与が減るほどAIの性能が上がる可能性がある。AI研究の有力拠点であるカナダ・アルバータ大学のリチャード・サットン教授は「人間の知識を活用する手法よりも、コンピューターパワーを活用する方が常に効果的だ。それが70年間にわたるAI研究の最大の教訓である」と断言する。サットン教授は2019年3月に「苦い教訓」というコラムをネットに公開し、「AI研究者は今後、AIにAIを開発させる『メタ手法』の考案に専念すべきだ」との見方を提示した。

今後有望な機械学習手法
AI開発における人間の関与は減っていく
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 日本のAI開発スタートアップであるグリッドの曽我部完社長はサットン教授の指摘について「子どもの教育と同じことだ」と解説する。「小中学校ぐらいまでの教育とは、教師が子どもに知識を教えることだ。それが高校・大学と進むにつれ教師が教えるのは主に学習の仕方や物事の考え方になり、知識の習得は学生本人の主体的な行動になる」(曽我部社長)。

 つまり人間が教師データを与えてAIに学ばせる教師あり学習は小中学校までの教育にすぎない。そのレベルを通過したAIに必要なのは、「学習する方法」を教えることだ。そうすれば後はAIが自ら学んでいくという。

 実際に最近のAI開発の主流も、AIが自ら教師データを作り出す「自己教師あり学習」や少量の教師データを補う「半教師あり学習」、AIがAIを開発する「転移学習」「メタ学習」などにシフトしている。

富士通研は「半教師あり」で成果

 富士通研究所は「オートノマス(自動)機械学習」プロジェクトの下で、半教師あり学習や転移学習などの開発を進めている。同社の穴井宏和プロジェクトディレクターは「AIを活用すべき企業の現場には、正解メタデータが付与された教師データなどほとんどない」と指摘する。そのため半教師あり学習や教師なし学習に向かうのは必然だという。

 富士通研究所は2018年4月に、医療画像から腫瘍の位置を検出するAIを開発するのに半教師あり学習を使ったと発表している。同社が開発したのは、腎臓の断片を一部採取して顕微鏡で撮影した「腎生検画像」から、血液のろ過機能を担う「糸球体」という組織の有無や位置を検出するAIだ。

 高い精度が求められる物体位置推定AIをディープラーニング(深層学習)によって開発するには、通常であれば数万件以上の教師データが必要だ。しかし腎生検画像のような特殊なデータの場合は、大量の教師データを用意するのに大きなコストがかかる。

 富士通研究所は半教師あり学習を適用することにより、正解メタデータ付き腎生検画像50枚と正解メタデータの付いていない腎生検画像450枚だけで、糸球体の位置を高い精度で推定するAIを開発できたという。

 どうやって教師データの少なさを補ったのか。富士通研究所はまず50枚の教師データを使った教師あり学習によって、腎生検画像を入力すると糸球体の位置情報を出力する「エンコーダー」と、その真逆で糸球体の位置情報を入力すると腎生検画像を復元する「デコーダー」を開発した。

 次に正解メタデータの付いていない腎生検画像450枚(元画像)をエンコーダーとデコーダーにそれぞれ通して復元画像を作成。復元画像と元画像を1つずつ突き合わせた。エンコーダーとデコーダーの精度が高ければ元画像と復元画像は一致するが、精度が低いと一致しない。

 この原理を使って元画像と復元画像が一致するようにエンコーダーとデコーダーのニューラルネットワークを調整していった。これにより教師データを使わずにAIの推論精度を引き上げた。

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