テレワーク環境でオフィスの臨場感を仮想的に再現することを目指し、「雑談」や「相談」などインフォーマルで偶発的なコミュニーションの促進に重点を置いたサービスを指す。

 2020年3月以降の新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークを導入する企業が相次ぎ、従業員がオフィスで一堂に会することが難しくなった。これに伴い、ZoomやTeamsといったWeb会議ツールの導入が一気に進んだ。

 一方で、在宅勤務の長期化の弊害として、アイデアの創出や問題解決に資する従業員同士の会話が少なくなったり、従業員が孤独感や疎外感を抱くようになったりした。従業員のエンゲージメント(積極的な関与)の低下は、生産性にもマイナス影響を与えかねない。こうした問題の解決手段として登場したのが仮想オフィスである。

 現状では、国内外のITベンダーがSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)などの形態で提供しているが、市場創造期のため主流と言えるサービスはまだ存在しない。

フロアマップなどサービスごとに特徴

 仮想オフィスは、幾つかの種類に分類できる。端的な違いは、オフィスをイメージしたフロアマップの有無、従業員のアイコン画像の取り扱いといった見せ方の工夫だ。

 例えば日立ソリューションズが販売するWalkabout Workplaceでは、始業時に仮想オフィスにログインすると、フロアマップが表示され、静止画像のアイコンにより従業員の仮想オフィス内の位置や在席状況を一覧できる。マップ上で対応可能な人のアイコンをクリックすると、ビデオチャット画面が立ち上がり、すぐに会話を始められる。会話の途中で他のメンバーが加わることも可能だ。

 ソニックガーデンのRemottyはフロアマップは採用しておらず、ログインすると出社している従業員の顔写真が並ぶ。顔写真は各自のノートパソコンの内蔵カメラなどで2分ごとに撮影・更新され、席を立つと「離席中」と表示される。更新されない顔写真のアイコンの表示に切り替えることも可能だ。雑談や相談は、在席中の人の写真をクリックしてテキストチャットを開始できる。チャットのやり取りは原則として他の人とも共有するが、第三者に見られないようにすることもできる。

 NTTコミュニケーションズのNeWorkもフロアマップを採用していない。ログインすると、部門単位の画面に任意に設けた円形のミーティングルームが並ぶ。それぞれのルームにいる従業員は顔写真などのアイコンで判別できる。特徴的なのは、音声によるチャットを基本としていることだ。マウス操作により、各ルームでの会話内容を聞いたり、発言したりできる。画面に表示されている従業員と1対1の会話も可能だ。

 仮想オフィスを巡っては、VR(仮想現実)ゴーグルや3次元のオフィス空間内を動くアバターを用いるサービスも開発されている。どのようなコンセプトや機能を持つサービスが受け入れられるのか、市場が確立するには少し時間がかかりそうだ。